1 港湾運送事藁の現状


(1) 港湾運送量

  港湾運送量は,近年の経済成長に伴う流通貨物量の増加を反映して年々増加している。昭和44年の船内荷役量は,全国93港で3億7,950万トンに達し,対34年比で約2.5倍の増加となつている。
  一方,はしけ運送量は8,020万トンで対34年の約1.5倍にとどまり,船内荷役の増加率をかなり下まわつている。これは港湾施設の整備により,経岸荷役の比重が高まつているためと考えられる。ちなみに,34年から44年の間に経岸荷役率は53%から73%へ上昇している。
  また,港湾別にみると,船内荷役量については5大港(京浜,名古屋,大阪,神戸および関門)の占める比率が全国の約44%であるのに対し,はしけ運送量については約81%となつており,5大港において,はしけ運送が極めて多いことがわかる 〔II−(III)−21表〕

(2) 港湾運送事業

  これらの港湾運送貨物を扱う港湾運送事業者(一般港湾運送事業者,船内荷役事業者,はしけ運送事業者,沿岸荷役事業者およびいかだ運送事業者)は,昭和45年3月末現在全国で1,273社である。これを港別累計でみると1,603社となる。これら事業者に対する港湾運送事業の免許数をみると, 〔II−(III)−22表〕のとおり全国93港で2,496で,その約56%が5大港に集中している。また港湾運送事業者の事業規模をみると,資本金5,000万円未満のものが全体の79%を占め,資本金5,000万円以上のものは21%にしかすぎず,近年事業規模の拡大が図られてきているものの,依然として零細な規模の事業者が多い 〔II−(III)−23表〕

  次に船積貨物の個数の計算,受渡の証明等を行なう検数事業等についてみると,45年3月末現在,検数事業者7社,鑑定事業者22社検量事業者26社となつており,登録を受けてこれらの事業に従事する者は,同年3月末現在,検数人10,829人,鑑定人1,624人,検量人4,344人となつている。なお,これらの港湾運送事業者のほか船積貨物の警備等を行なう港湾運送関連事業者が,45年3月末現在637社ある。

(3) 港湾運送用施設

  港湾運送用施設の保有状況は 〔II−(III)−24表〕のとおりであり,荷さばき場,荷役機械等の港湾運送用施設は港湾運送用貨物の増加につれて,ほぼ順調な増加を示している。このうち荷役機械については,近年軌道走行式,可搬式,固定式の各種クレーンが減少する傾向にあり,反面,能率のよい大型荷役機械,フオークリフト等が増加しつつある。

  この港湾運送用施設については,従来から,港湾運送事業者の自己資金および民間からの借入に加え,日本開発銀行,中小企業金融公庫,船舶整備公団等の政府関係機関により,その整備がはかられてきたが昭和44年度からはこれに加えて,事業者の拠出金をもとに設立された財団法人港湾運送近代化基金によりその整備がはかられている。
  なお,フオークリフト,移動式クレーン等の荷役機械については,中小企業近代化促進法の対象業種に指定された40年4月以降,毎年当該年度に設置すべき数量を定め,中小企業金融公庫の低利な融資により計画的な整備を図つている。

(4) 港湾労働

  港湾運送に従事する港湾労働者は,昭和44年12月末現在,常用港湾労働者103,990人,登録日雇港湾労働者9,581人に達している。しかしこの港湾労働は,筋肉労働が多く,また,労働環境が厳しいため,近年その不足が顕著となつてきており,船内,はしけ,沿岸の各部門とも取扱貨物量の増加率に比べ労働者の増加率がかなり下回つている 〔II−(III)−25表〕。この労働者の伸びの低さは,機械化度の向上等によりカバーされているものと思われる。

  また,港湾運送は需要の波動性が大きいため,はしけ部門を除けばかなりの比率で日雇労働者に依存してきたが,41年以降,その常用化が急速に進んでおり,船内部門における日雇依存率は34年の54%から44年には13%へと大巾に改善されている 〔II−(III)−25表〕


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