2 港湾運送事業の近代化


(1) 港湾運送事業の集約化

  港湾運送は海陸輸送の接点にあつて,わが国流通体系上重要な地位を占めているが,この港湾運送にたずさわる港湾運送事業者は企業基盤の脆弱な中小企業者が圧倒的に多く,各企業が元請,下請と複雑に結びつき,作業面においては機械化が著しく立遅れている等その前近代性が各方面から指摘されてきた。殊に近年,コンテナ輸送に代表される輸送革新の急速な進展および労働力需給の逼迫化に対処して港湾運送事業を近代化するためには,事業の集約化が是非とも必要であるということが港湾運送事業者のみならず,荷主,船舶運送事業者等関係各方面から強く叫ばれるに至つた。
  このため41年以降港湾運送事業法を改正するとともに,港湾審議会の答申を得て,一貫責任体制の確立(縦の集約化の推進)と事業規の拡大(横の集約化の推進)に向つて,集約が推進されてきた結果,縦の集約化については約230にも及ぶ資本提携や役員派遣が行なわれ,関連下請によるみなし自営分を含めほぼ自営率が充足されている。
  また,横の集約化については,合併,事業譲渡,事業廃止等が行なわれ,改正港湾運送事業法の施行以来(41年10月1日以降)事業者数で298(16%),免許数で947(28%)の減少をみるに至つている。

(2) 港湾運送近代化基金

  港湾運送事業の近代化を将来にわたつて推進するためには,事業者個々の努力に頼つては到底大きな効果を期待し得ないので,各事業者の近代化支出の一部を中央にプールし,これに国の助成を加えて,効果的な資金運用を図るとともに,業界のレベルアツプを図ることが必要である。
  このような趣旨にもとづいて,44年8月港湾運送事業者が拠出する港湾運送近代化資金をもとに,港湾運送事業の近代化のための施設の整備,資金の調達等を行なう港湾運送近代化基金(以下「基金」という。)が設立された。基金は港湾運送事業者から拠出された近代化資金(年間約15億円)をもとに,44年度から@中小企業金融公庫とリンクして共同荷さばき施設の整備,A船舶整備公団との共有による荷役機械の整備B近代化借入に係る債務保証等を行なうこととなつており,その一部は既に実施に移されている。

(3) 港湾審議会の答申

  港湾における輸送革新の進展は,コンテナ専門埠頭,工場埠頭,サイロ埠頭等の専用ふ頭において特に著しいものがあり,港湾運送事業のあり方にも大きな影響を及ぼしつつある。
  このため,港湾審議会は,専用埠頭における港湾運送事業のあり方を審議し,45年3月「港湾運送事業の運賃料金体系の合理化及びふ頭の効率的使用」に関し,専用ふ頭の効率的使用と特殊料金のあり方について答申した。この答申により@コンテナ専用埠頭,工場埠頭,大規模流通センター埠頭等の専用埠頭における港湾運送は貨物の流れに即応し,かつ,港湾運送の責任の所在を明確にした一貫直営体制,又はこれと同等な一貫責任体制(一貫運営体制)の確立を図ることが必要であること。A専用埠頭における特殊料金は一般料金に比し,安易に取扱われることがあつてはならないこと。B港湾労働への配慮が必要であること等が明らかにされた。


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