1 世界の国際輸送状況
lCAO(国際民間航空機関)に加盟している117カ国の定期航空会社の昭和44年における輸送実績(ICAO推定による)は旅客輸送量が2億8,900万人で3,490億人キロ,貨物輸送量が100億7,000万トンキロ,郵便物輸送量が24億9,000万トンキロである。
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また,利用率(ロード・フアクター)についてみると,世界の定期航空会社の44年の平均利用率は,重量利用率(有償トンキロ*(1)/有効トンキロ*(2))が,47.7%,座席利用率(輸送人キロ/利用可能人キロ)が51.6%で,25年以降の20年間で最低となつている。前年と比較すると,重量利用率が1%,座席利用率が1.8%とそれぞれ減少している。
世界の航空会社の経営状態をみると,営業収入の面では毎年かなりの増加を示してきており,昭和44年における推定営業収入は,158億9,700万ドルに達した。他方推定営業経費も152億700万ドルに上り,しかも営業経費の増加率が営業収入の増加率を大幅に上回つた。そのため推定営業収益は6億2,700万ドルと,前年に比べ1億2,700万ドル下回つており,42年以来引き続き減少傾向を示している 〔III−3表〕。
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このように収益が減少したのは,営業収入に大きな影響をもたらす平均利用率が低下していることによるものと考えられる。
イ 外国航空企業の乗り入れ状況
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ロ 二国間協定
したがつて,新たにある国に定期便が乗り入れる場合には,その国との間に航空協定を締結するのが通例であり,また航空協定が締結された後においては路線を改めるための附表改訂および運航便数等輸送力に関する問題等については両国の航空当局間で協議して決定されるのが通常である。 わが国は現在仮署名のものまで含めて28カ国との間に航空協定を締結しており,これに基づいて日本側企業は世界の31都市へ乗入れを行なつている。これらの路線網をさらに拡充し,より実効あるものにするため,諸外国と鋭意航空交渉を行ない,わが国航空権益の拡充と秩序ある国際民間航空の発展を図つてきている。 最近わが国の行なつた航空交渉の傾向としては,新規の航空協定締結交渉よりむしろ路線修正,便数等に関する交渉が多くなつてきており,昭和44年度においては,北欧三国(5月および45年1月),アメリカ(6月および9月),フイリピン(8月),イタリア(9月),ソ連(10月),韓国(12月),マレーシア,シンガポール(45年3舟),オランダ(45年3月)等との間で,また45年度においては,ソ連(5月および8月),ドイツ(5月),韓国(6月),スイス(7月),インド(7月)との間で交渉を行なつた。 北欧三国との交渉においては,シベリア上空を経由して日本と北欧三国を連絡する路線を開設する問題が討議され,42年2月以来5回にわたる交渉を経て本年1月の交渉において,両国間でシベリア路線を相互に許与することが合意された。 44年度において重大な関心がよせられたアメリカとの交渉は44年4月アメリカ合衆国政府が行なつた米側航空企業の太平洋への大量の進出を内容とする「太平洋ケース」とよばれる免許審査事案の決定が,わが国航空企業の競争上の立場に著しい影響を及ぼすことに対処するため,日本側路線の拡充を図ることを主たる目的として行なつた。2回にわたる交渉の結果,日本は新たに「大圏コース経由ニユーヨーク路線」及び「サイパン経由グアム路線」を獲得し,米側には米国補助航空企業の行なう日米間のチヤーター便の44,45年の便数枠について若干の拡大を認めた。日米両国にとつて残された問題即ち日本にとつて大圏コース上の地点としてのシカゴの追加を含む日本側路線の一層の強化および米側にとつて日米間のチャーター便に関する問題について両国は,45年中に再び協議を行なうこととなつている。 フィリピンとの交渉は,新たに航空協定を締結するために行なわれたものである。日本とフィリピンとの間の航空運送業務は従来より行政許可ベースにより東京-マニラ間の相互乗入れの形で実施されていたが,両国の航空関係を航空協定に基づく安定したものとするため,43年12月にひき続き行なわれたもので44年8月23日協定等につき仮署名が行なわれ,45年1月20日署名,5月14日発効の運びとなつた。同協定により日本側はマニラ以遠オーストラリア〜ニュージーランド〜ハワイヘの路線を獲得し,フイリピン側には東京以遠ホノルル〜サンフランシスコ〜ニユーヨークの中部太平洋路線を与えた。 イタリアとの交渉においては,両国航空協定附表の改訂を中心に協議が行なわれ,北極回り路線の相互交換,南回り路線への地点の追加等について合意された。 わが国航空権益の飛躍的発展が図られたシベリア経由路線開設をめぐるソ連との交渉は,44年2月に引き続き44年10月〜11月モスクワにおいて行なわれた。この交渉は,44年2月の交渉において45年3月末よりおそくない時期に開始されることに合意をみたシベリア経由路線の自主運航の実施につき具体的取りきめを行なうため開催されたものである。交渉の結果,日本側航空企業が自己の航空機および乗組員による国際航空業務(いわゆる自主運航)を45年3月28日から開始することが合意され,この合意に基づき日本航空は,同日から,モスクワ経由パリ線,45年6月2日からモスクワ経由ロンドン線の運航を開始した。なお,ソ連側航空企業は3月28日より,フランス側航空企業は4月10日より,英国側航空企業は6月2日よりそれぞれシベリア経由路線の運航を開始した。 ソ連とは更に本年5月にハバロフスクと日本国内の1地点との間に貨物の定期航空業務を開始する問題を検討するため交渉が行なわれたが,結論を見るに至らなかつた。 シベリア経由路線の開設に伴い,同路線の運航の権利を未だ得ていない西欧諸国も,同路線が将来の日欧間連絡のメインルートとなることが予想されるところから,同路線の運航を強く希望しており,オランダ,ドイツ,スイスとの交渉は本問題を中心に行なわれたものであるが,いずれも結論を得るに至つていない。 韓国との交渉においては,両国航空協定附表の改訂を中心に2回にわたり協議が行なわれ,44年12月の交渉において,日本側路線に「日本-済州」線を追加すること及び韓国側路線の大阪以遠の地点にサイゴン,バンコツクを追加すること等が合意され,また45年6月の交渉において韓国側路線東京以遠シアトル線を東京以遠ホノルル経由ロスアンゼルス線にふりかえること等が合意された。
注*(1) 有償トンキロとは、有償旅客人キロをトンキロに換算し、これに有償貨物,郵便物および超過手荷物トンキロを加えたものである。
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