1 収支状況および財務状況


  日本航空(株)の昭和44年度収支は, 〔III−17表〕のとおり国際線,国内線ともに引き続き順調な推移を示した。

  営業収入は,両線あわせて1,374億6,800万円で前年度に比較すると28%の増収となつており,これに営業外収入を加えた総収入は,前年度比30%増の1,412億600万円であつた。
  一方,費用は前年度比25%増の1,180億1,800万円にとどまつたので,経常利益は231億8,800万円となり,前年度に比べて65%増の大幅な増益となつた。これを売上高利益率でみると,16.9%であり,前年度の13.1%に比べ著しく向上している。
  また,国際線と国内線の構成比をみると,総収入のうち国際線収入が74.5%,国内線収入が25.5%であり,さちに経常利益については,国際線利益が56.4%,国内線利益が43.6%となつている。前年度の総収入に占める国際線収入の割合が74.1%,国内線同25.9%,また経常利益に占める国際線の利益の割合が46.7%,国内線同53.3%であったのに比較すると,総収入における両線構成比がほぼ一定なのに対し,国際線部門の利益率が向上した結果,経常利益では国際線利益の割合が9.7ポイント増え,42年度以来2年ぶりで利益の過半を占めるにいたつた。
  ここで,国際線の収支状況をながめてみよう。
  44年度国際線営業収入は,前年度比29%増の1,021億5,800万円,総収入は同比30%増の1,051億9,400万円であり,営業利益で147億8,700万円,経常利益で130億8,100万円の収益をあげ,前年度に比べてそれぞれ51%,99%の増益となつた。これを売上高経常利益率でみると12.8%となり,前年度の8.3%に比べるといちじるしく向上した。このような増収増益をあげることができたのは,供給増加を上まわる根強い旅客需要の増大によるものである。
  なお,国際線収入のうち貨物収入は,207億3,700万円で前年度に比べ42%の増収となり,国際線旅客収入の伸び率27%を大きく上まわる増収率を示した。この結果,国際線収入に占める貨物収入の割合は20.3%となり,前年度の同割合18.5%よりさらに比重を高めた。
  このような国際線の好調に加えて国内線の業績向上もあつたため,44年度には前述のとおり231億8,800万円の経常利益を計上することができたものである。しかしながら,パシフイツクケースの実現および巨人機就航による国際競争の激化により,企業体質の強化が急務となつているので,このうち155億1,600万円を海外取引割増償却準備金に繰入れ(同戻入を差し引くと繰入純増額は133億2,800万円),さらに航空機特別償却その他で65億9,400万円を特別損失として内部留保の充実を図つた。この結果,税引前利益は32億6,600万円,税引後利益は20億6,600万円となり,民間保有株式に対して前年度に引き続き8分配当を行なつた。
  なお,日本航空(株)の財務状況の推移は 〔III−18表〕のとおりである。44年度末の使用総資本は1,771億円に達しているが,これは前年度末に比べて30%増であり,42年度末の1.8倍の規模にあたる。また,44年度末の財務諸比率をみると,自己資本比率30%,負債比率231%,固定長期適合率87%,流動比率135%となつている、42年度末および43年度末の自己資本比率はそれぞれ33%,30%,また負債比率はそれぞれ196%,224%と国際競争に対処するための航空機導入が多額に及んだため,44年度における2割増資によつても,これらの比率はわずかながら悪化をまぬがれなかつた。しかしながら固定長期適合率は42年度末94%,43年度末90%,また流動比率はそれぞれ14%,130%に引き続き,いずれも44年度はさらに向上を示しており,最近数年来の急速な内部留保の充実にともない,財務面における安全性は44年度も引き続き高まりつつあるといえよう。


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