2 新東京国際空港の建設


  新東京国際空港は,航空輸送の急激な増大と航空機の急速な進歩に対応できる国際空港として,新東京国際空港公団により建設することとし,昭和41年7月4日にその位置を千葉県成田市三里塚地区に閣議決定し,早期供用開始を行なうベく,諸般の対策を推進している。

(1) 配置計画

  新空港の敷地面積は,約1,065ヘクタールで,現東京国際空港の約3倍の規模である。
  この新空港は,国際線旅客数1,600万人,貨物量140万トン程度の航空輸送需要に対処できるよう計画されており,これに対応して敷地内に4,000メートルおよび2,500メートルの2本の滑走路が2,500メートルの間隔をおいて平行し,かつ,これらと交叉する3,200メートルの横風用滑走路が建設されることとなつている。それぞれの滑走路の内側には一方通行の誘導路を2列平行に設置し,また,旅客,貨物両ターミナルビル,駐機場,航空機整備施設および各種利便施設を建設するとともに,管制塔,出入国検査場等の国の施設及び航空保安施設を設置することとなつている。
  新空港の建設計画は,第1期計画と第2期計画に分けられ,第1期計画では,国際線旅客数540万人,貨物量40万トンを処理できる施設を建設することとし,具体的には4,000メートル滑走路1本およびこれに附帯する諸施設を建設し,引き続き第2期として,全面供用を目途に残工事を完成させることとしている。

(2) 建設の現況

  新空港建設に必要な空港用地は,国公有地(旧下総御料牧場等)395ヘクタールおよび民有地670ヘクタールである。民有地の取得は,本年8月末現在民有地全体の88パーセントに当たる588ヘクタールの買収を終え,これを第1期工事区域についてみると,95パーセント完了している。残る未買収地の取得については鋭意努力しているが,一坪運動等の意識的な反対運動については,昭和44年12月16日建設大臣による事業認定の告示が行なわれたので,建設工程の関係から必要とする土地の収用手続を進めており,本年6月12日に第1回の収用委員会の審理が行なわれた。国有地であつた旧下総御料牧場の取得については,その一部は,栃木県高根沢地区に建設した新御料牧場との建築交換により取得し,残りの部分についても,第63回国会で成立した新東京国際空港公団法の一部を改正する法律に基づく現物出資により取得した。公有地であった県有林については,建築交換によつて取得した空港敷地外の下総御料牧場跡地の一部と交換することによつて取得している。
  空港敷地提供者に対する代替地については,公団は,千葉県の協力を得て約500ヘクタールを用意し,すべて造成を完了し,個別的な配分も終了し,既に家屋の移転および耕作が行なわれている。
  一方,空港建設工事用資材輸送施設として,専用鉄道および専用道路の敷設ならびに既設道路の改良工事を実施し,自動車および専用列車により砕石等の資材輸送が行なわれている。
  空港建設工事については,第1期工事区域内に工事用道路を完成し,谷地田部の地盤改良工事,排水幹線工事,上下水管工事,共同溝工事等に続いて滑走路,誘導路工事等の基本施設の土工事を実施し,旅客ターミナルビルの基礎工事も進めている。土工事に引き続き,管制塔等官庁庁舎,貨物ターミナルビル等の建築工事も始められ,それに関連する各種工事も実施して行くこととなつている。

  また,航空機の騒音対策については,43年10月11日の臨時新東京国際空港閣僚協議会の決定に基づき,運輸大臣は,騒音区域として,滑走路末端から2キロメートル,滑走路中心線から両側おのおの600メートルの地域を指定し,44年度から公団が千葉県の協力を得て土地の買取りを行なうとともに,45年度から学校等の防音工事助成措置を講じている。さらに,航空機騒音を遮断するため新空港の周辺に防音林を設置する計画をたてている。
  新空港の建設と並行して実施しなければならない道路土地改良,河川改良,下水道,新都市計画等空港関連事業については,新東京国際空港建設実施本部(本部長,運輸大臣)において,事業計画および事業費を決定し,その円滑な実施を図るため,地元の関係地方公共団体の財政負担の軽減を内容とする「新東京国際空港周辺整備のための国の財政上の特別措置に関する法律」が第63回国会において成立し,44年度事業から財政上の特別措置が適用されている。
  さらに,新空港・都心間の連絡輸送については,首都高速6号線・7号線の建設,京葉道路の拡幅および東関東自動車道の建設ならびに京成電鉄の新空港乗入れが進められており,また,長期的見地から,東京湾埋立計画に伴う東京湾津道路の早期藩工および国鉄新幹線方式の高速鉄道の乗入れの具体的措置について検討されている。
  このような総合的な措置により,新空港の早期供用開始を行なうべく努力が重ねられている。


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