第6節 航空事故


  昭和44年における民間航空機の事故発生状況は 〔III−35表〕に示すとおりである。
  事故の運航形態別にみると,地上一飛行機1件,離陸時飛行機4件,着陸進入時飛行機11件,滑空機1件,航行中飛行機6件,回転翼12件である。この分類において,事故発生件数の最も多い運航形態は,飛行機においては着陸進入時で事故件数の50%を占めている。回転翼にあつては,とくに農薬散布中の事故が目立ち事故件数の約83%を占めている。
  航空事故の原因としては,従前と同様操縦者の操作の誤り,判断の不適切等人為的なものが多い。
  昭和45年6月3日に全日空(YS-11)宮崎事故,および昭和45年7月1日に日本航空(DC-862)サンフランシスコ沖事故の調査結果が発表されたが,その概要は下記のとおりである。
  昭和44年10月20日,全日空所属YS-11,JA8708は,宮崎空港において着陸滑走中,過走帯末端から逸脱し滑走路延長土約132メートルの地点に欄座した。同機には旅客49名および機長以下4名の乗組員が乗つていたが,旅客38名および乗組員4名が負傷した。本事故の原因は,接地速度が着陸重量に対応した速度を上回つたことと,接地点がかなり内側に入つたことによるもので,これにハイドロプレーン現象による影響が関与したものと認められる。
  昭和43年11月22日,日本航空所属ダグラスDC-8-62,JA8032は,サンフランシスコ湾に誤つて着水した。旅客および乗組員の死傷はなかつた。本事故の原因は,所定の飛行方式からの逸脱によるものであり,この逸脱は同型式機に装備されている装置についての慣熟の不定およびそれを使用する頻度の少なさに基因するものであった。
  昭和45年4月過激派学生集団によるハイジヤツキングが発生したが,ハイジヤツキング防止対策としては,できる限り事前に防止する以外に決め手となる対策はなく,諸外国におけるハイジヤツキング発生状況にかんがみても,政治亡命等が多いことからまず警察当局における事前調査を行なうことが必要であるが,あわせて空港における旅客,手荷物の点検の強化,予防的機能をもつ処罰法の制定等を通じて,かなりの予防効果をあげうるものと考える。また機内における防止措置としては,操縦室と客室との隔離,操縦室から客室内を監視用意の設置等の措置が検討されており,すでに実施されているものもあるが,この他45年5月航空法の一部改正を行ない,機長の権限を強化して機内における安全および秩序の維持を図ることとした。今後,ICAOの「ハイジヤツキング防止条約」の成立によつて,さらに国際的なハイジヤツキング防止についての協力体制が整備されることとなろう。

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