3 わが国の国際旅行収支の状況


  昭和44年のわが国の国際旅行収支は, 〔IV−9表〕のとおり,受取は,対前年比17%,2,200万ドル増の1億4,800万ドルと順調な伸びを示した。一方,支払は,44年4月から観光渡航などの1回の外貨持ち出し制限額が700ドルに引き上げられたこと,ヨーロッパなどへの長距離旅行が増加したことなどにより,対前年比44%,7,400万ドル増の2億4,100万ドルと急激な伸びを示し,収支は9,300万ドルの大巾な赤字となつた。

  このように,44年の国際旅行収支は赤字巾を大きく拡大したが,経済社会の国際化の動きのなかで,国際親善,国際交流に重要な意義を有する国際観光については,海外旅行を制限することなく,海外観光宣伝,宿泊施設の整備,その他の積極的な外客誘致方策をいつそう強化して国際観光を振興する必要がある。
  旅行収支のうち観光収支は,従来黒字を続けてきたが,44年は,観光目的の海外渡航者の伸びが大きかつたこともあり,支払が対前年比69%,4,200万ドル増の1億300万ドルと爆発的な増加を示し,受取を700万ドル上回り,戦後はじめての赤字となつた。
  昭和43年の相手国(地域)別国際旅行収支は, 〔IV−10表〕のとおり,受取は米国からのものが556%7,000万ドルと圧倒的に多い。これは,わが国への来訪外客の49%が米国人であること,米国人客1人当りの消費額が比較的多いことによる。一方,支払いの面では米国への支払が18.0%,3,000万ドルと最も多く,また1人当り支払額も288ドルと著しく多いが,海外旅行の長距離化の影響によりヨーロツパ諸国への支払が急増し,合計で米国への支払額を相当上回ることとなつた。


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