4 国際観光振興施策


  従来,国際観光に関する基本的考え方は国際観光収支の改善に重点をおいていたが,わが国の国際社会における地位の向上に伴い,わが国の国際的責任の増大を認識し,国際交流国際親善の増進の観点から,次のような国際観光振興策を積極的に講ずる必要が生じている。
  第1は,激化する各国の観光客誘致活動に対処するために,国際観光振興会を中心とした外客誘致活動を一層充実する。第2は,観光面での国際協力,とくに発展途上国の観光開発等の経済振興策に対し,積極的な協力をする。第3は,大都市におけるホテル需給の逼迫を緩和するため,宿泊施設の整備を積極的に進める。第4は,施行あつ旋業,通訳案内業の健全な発展をはかる。第5は,国際観光障壁をできるだけ緩和し,国際交流の自由化を図ることである。
  以上の観点から,運輸省は,観光面での唯一の政府レベルの国際機関である官設観光機関国際同盟(IUOTO)をはじめ,太平洋観光協会(PATA),東アジア観光協会(EATA)等の国際機関の活動の強化,「箱根国際観光センター」(仮称)および・東南アジアを中心とした低開発国援助のための「経済開発促進センター」(仮称)の設置の推進,国際観光振興会の活動の強化,ホテル,旅館の整備,旅行あつ旋業法の検討等を積極的に推進している。

(1) 外客の誘致

 (イ) 海外観光宣伝

      わが国の海外観光宣伝は,特殊法人国際観光振興会を中心として行なつており,国は同振興会に対し,出資及び補助金の交付を行なつている。現在の出資額は2億9,500万円であり,昭和44年度9億5,612万円(昭和45年度9億8,902万円)の補助金を同振興会に交付して,わが国の海外宣伝活動を推進している。同振興会は,昭和44年度10億6,049万円の事業費により,世界の主要30都市に配置した海外観光宣伝事務所および海外観光宣伝嘱託員を通じて,積極的な宣伝活動を行なつた。

 (ロ) 国際会議・行事の誘致

      国際会議,行事には一度に多数の外客が来訪し,会議,行事への参加のみならず,観光旅行をあわせて行なうことが多く,更にそれを契機として内外の報道機関が海外に日本の文化,経済等を紹介すること等,外客誘致上きわめて効果が大きい。国際観光振興会には,国際会議・行事の誘致のためのコンサルテイング専門機関として,コンベンシヨン・ビユーローが設けられており,日本側受入機関に対し積極的に会議運営についてコンサルテイングを行なうとともに,各海外事務所と協力して,会議誘致の宣伝活動を行なつた。
      わが国で開催される国際会議は 〔IV−11図〕のとおり,誘致活動の活発化,わが国の国際的地位の向上,会議運営処理能力が高いこと等により年々増加しており,昭和44年には190件,参加人員37,220人に達した。

      このような国際会議・行事を受入れるため,運輸省では国際会議,行事の用に供する施設として,「箱根国際観光センター」(仮称)の建設準備を進めており,43年度までの調査により,建設候補地として神奈川県箱根町畑引山地区を決定し,各種基礎調査,基本構想のとりまとめ等を行なつた。昭和仏年度には調査設計費3,000万円をもつて一般公募による企画設計競技を行ない,入選者4名を選定した。

(2) 観光面における国際協力

  国際観光の振興を図るためには,広く諸外国間および国際的機構の場で種々の協力をしていくことが必要であり,また,近年においては,とくに開発途上国に対する協力の要請が高まつているので,わが国は観光面において次のような国際協力を実施し,また実施計画の策定を行なつている。
  開発途上国,とくに東南アジア諸国に対する国際協力については,東南アジア開発閣僚会議において検討されているが,その第3回会議においてタイ国政府より,東南アジアの観光,貿易および投資を促進することを目的とする経済開発促進センター(仮称)を世界各地の主要ビジネス地区に設置するため,日本がイニシアテイブをとるよう提案がなされ,第4回会議においても引き続き検討されたが,45年5月に,インドネシアで開催された第5回会議において,同センターの具体的な活動内容にっき参加国間で協議することとなつた。
  運輸省としては,同センターの設立に関し,機能,施設両面について調査研究するためにアジア観光国際協力調査会を設置して,広く各界の意見を徴し政策の立案の参考としている。
  さらに,同センターについては外務省,通産省等関係各省とともに検討を進め,その早期設立を図ることとしている。
  44年度には,タイ,セイロン,ヴエトナム,中華民国等8カ国より合計16名の研修員を受け入れ,観光行政一般,観光宣伝事業,ホテル経営,旅行あつ旋業その他の観光関連事業等について研修を実施した。また,本土との一体化施策の一環として,沖縄に専門家を派遣し,観光拠点の計画,ホテルの整備方策等観光開発計画の策定全般にわたつて技術援助を行なつた。
  なお,わが国をはじめ,世界103カ国の政府観光機関および88の観光関係団体が加盟している官設観光機関国際同盟(IUOTO)については,その機構を強化するため,政府間機関の性格をもつ国際機関とし,国際連合開発計画(UNDP)の参加実施機関とする等を内容とする決議が,44年12月に国連本会議で採択された。これに基づき,45年9月,メキシコにおいて前述のような機構の改組を内容とするIUOTOの規約改正を審議採択するため,IUOTO臨時総会が開催されることとなつている。


表紙へ戻る 目次へ戻る 前へ戻る