1 交通公害の現状大気汚染,水質汚濁,騒音に代表されるわが国の公害は,45年度において部分的には改善のきざしをみせたものもあつたが,大勢としてはいぜんとして悪化しつつある。 交通公害についてみると,大気汚染として,自動車の排出ガス中の一酸化炭素による汚染は,交通量の増大にしたがい,大都市内に限らず,その周辺部の主要道路に沿つて進行しつつある。また,東京都新宿区牛込柳町の鉛汚染事件(5月),同じく杉並区における光化学スモツグ事件(7月)のように,未規制物質による新しい形の公害の発生もみられた。 水質汚濁については,わが国周辺の海域は東京湾,伊勢湾,瀬戸内海を中心としてますます汚染が進んでおり,海上保安庁が具体的に把握した海洋汚染の発生件数は 〔1−5−3図〕のように年々急増している。その原因は,油によるものが圧倒的多数を占めているが,油以外のものも大幅に増加している。また,発生源としては船舶からのものが約半数を占めている。
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交通騒音については,自動車の増大にともなう都市部での道路混雑の慢性化により,住宅地域の裏通りにまで自動車が進出し,自動車騒音の範囲は拡大している。また,都市活動の活発化から,夜間の自動車運行による騒音も問題になつている。
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