1 収支の概況


  45年度の損益概況は 〔I−(I)−16表〕のとおりであり,当年度の営業損失は,1,549億円,これに営業外の損益を加えると,1,517億円の純損失となり,前年度を上回る赤字決算となつた。これにより,39年度以降の累積赤字額は5,654億円となり,国鉄の経営の危機はますます深まつている。

(1) 収入

  旅客輸送を輸送人キロでみると普通旅客は,万国博輸送の好調を反映して前年度に比べ8.8%増となつたが,一方定期旅客は,大阪附近および地方都市の不振を反映して前年度に比べ1.8%減となつた。この結果,輸送.人キロ全体の伸び率は,前年度に比べ4.6%増にとどまつたが,旅客収入は,普通旅客の伸長により,前年度に比べ11.3%増の8,463億円をあげ,予定収入をわずかながら上回つた。
  貨物輸送においては,フレートライナーを中心としたコンテナ輸送等の近代化施策による増送があつた反面,石炭,木材等の減送のため前年度に比べ輸送トン数において1.0%,輸送トンキロは3.8%の増加にとどまつたため,貨物収入は,前年度に比べ3.9%増の2,544億円となり,予定収入に対し6%およばなかつた。
  雑収入においては,財政再建補助金84億円,財政再建債利子補給金39億円を含めて450億円となり,前年度に比べ15.4%増となつた。
  これらにより,総事業収入は,前年度に比べ9.7%増の1兆1,457億円となつた。

(2) 経費

  営業経費は,総額において1兆3,006億円,前年度に比べ10.6%の増加となつた。経費中伸び率の著しいものは,人件費,業務費利子及債務取扱諸費および繰延資産除却費であるが,経費に対する構成比において54%を占める人件費(動力費,修繕費,業務費に含まれる人件費を含む。)の増加が経費全体の上昇に最も影響を与えている。人件費の増加の原因は仲裁々定の実施に伴う給与および諸手当の増加によるものである。また,利子および債務取扱諸費の増加は設備投資に伴う外部資金の流入増によるものである。その他,動力費,修繕費および業務費等は,列車キロ,輸送人員および輸送トン数等の業務量の増大にともなつて増大した。
  なお,東海道新幹線の営業収支をみると,営業収入は,2,086億円と前年度に比べ27%増であるのに対し,営業経費は903億円と前年度に比べ7%の増加にとどまつたため,1,183億円の利益を計上しており,在来線の収支が悪化しているのを大きく補つている。


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