3 水産業の船員需給


  漁船の船舶数は,ほとんど横ばい状況にかかわらず,船員数はかなりの減少を示している。(前掲 〔II−(II)−1表〕参照)
  一般的に漁船では,船舶の運航に従事する者よりも,漁獲に従事する者の乗組みの方がかなり多い。したがつて漁船の近代化は漁掛作業の機器の導入による省力化が中心となつて行なわれており,その進展は漁業の種類や船型の大小によつてまちまちではあるが,相当に進んでいることも船員数の減少の一つの原因とみられる。
  一方漁船では,漁期の関係や経営規模の弱少なことから,船員は季節ごとあるいは航海ごとに同一または異なつた船主に雇入と雇止をくり返すといつた雇用形態をとるものが多く,他の労働者と比較するための離職率を把握することはむずかしいが,周年雇用制を採つている2〜3の漁業をとつてみても,離職率は高くなつている。
  さらに,漁船船員の年齢構成の推移をみたのが 〔II−(II)−7表〕であるが,職員では20代,30代が減少して40代が増え,部員では20代が減つて40代50代が増えており,若年労働力確保がむずかしく,次第に高年齢化して行く傾向がうかがわれる。

  また,漁船船員の採用経路は,ほとんどが縁故によるものであり,あつ旋機関を経由する者は少ないが,船員職業安定所の求人件数は年々増加し,求人倍率は悪化しつつある。
  これらのことからみると,むしろ労働力不足による漁労員の確保がかなり困難になつてきていることが船員数の減少の一因であろう。


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