1 港湾海岸防災事業


(1) 海岸防災事業

  わが国海岸線総延長約2万7,000キロメートルのうち,海岸保全施設等により防護を必要とする延長は,約1万3,000キロメートルである。このうち,港湾区域内海岸は,総延長約6,400キロメートルで,防護を必要とする延長は3,700キロメートルである。
  45年現在において,防護を要する港湾海岸線延長の約60%は,なんらかの海岸保全施設があるが,機能の低下,老朽化等が著しく,その大部分にわたつて改修を必要としている。一方,残りの約40%に相当する部分については,新たに施設を整備する必要がある。

(2) 海岸事業5カ年計画

  臨海部の災害を未然に防止するための恒久的施策として,海岸保全施設の整備事業いわゆる海岸事業の長期計画を策定して海岸事業を計画的に推進し,もつて国土保全の万全を期する必要がある。このため,海岸行政を所管する農林,運輸および建設の3省は,45年度を初年度とする新たな海岸事業5カ年計画を策定し,46年3月30日これを閣議決定した。
  このうち,港湾区域における計画の概要は次のとおりである。

 イ 計画の規模

      港湾区域内海岸事業規模は,1,294億円(3省全体で3,200億円)であつて,これを要請別に区分すると, 〔II−(III)−12表〕のとおりである。

 ロ 計画の目標

      港湾海岸における5カ年計画事業により整備する海岸保全施設の完成延長は約720キロメートル(災害関連事業,地方単独事業等を含めると約790キロメートル)となる。
      これに44年度末の完成延長約790キロメートルを加えると,計画期間の完了する49年度末において約1,510キロメートル(災害関連事業等を含めると約1,580キロメートル)となり,これは要防護延長約3,700キロメートルの約41%(災害関連等を含めると約43%)に相当する。
      なお,3省全体の海岸では,約32%の整備が完了することになり,港湾海岸の整備が他の海岸に比べ相対的に進んでいることを示している。

 ハ 計画の内容

 (イ) 市街地海岸事業

      東京,名古屋,大阪,尼崎・西宮・芦屋,神戸および広島の6港湾海岸は,その背後の人口,資産の密度がきわめて高く経済,社会活動の中枢をしめる大都市をかかえ,とくに重要な海岸である。これらの地域については,とくに地盤沈下,地震時の甚大な災害等を考慮してこれらに対応する施設整備を重点的に実施することとしている。

 (ロ) 特定海岸事業

      特定海岸事業は,事業が海岸行政所管省庁間の海岸に連担し,事業規模が大きくかつ緊急性の高い地域の一定の海岸において実施するが,このうち,運輸省所管海岸における新潟,千葉,田子の浦等の港湾海岸に重点をおいて実施する。

(3) 45年度実施事業

  45年度における港湾海岸防災事業は, 〔II−(III)−13表〕のとおりである。


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