1 造船業をめぐる動き


  45年から46年にかけ,わが国造船業をめぐる4つの大きな動きがあつた。
  その一つは,45年6月および11月に行なわれた日本輸出入銀行の船舶向け融資条件の変更である。まず,日本銀行の輸出関係手数料改訂および輸出入銀行の収支改善のため,造船業が協力する形で6月に融資金利が4.75%から5%に引き上げられ,7月15日以降の建造許可船から適用された。続いて,11月に,OECD「了解」改訂に伴う国内措置として,輸出入銀行の融資金利を再度引き上げるとともに,融資比率を大輻に引き下げた 〔II−(IV)−1表〕。また,財政資金の需要および造船業の推移についての最近の動向にかんがみ,49年度以降輸銀融資対象船舶の量的規制を行なうことが決定され,46〜48年度についても,これらのトン数に650,795および881万総トンというメドが設けられた。

  第二番目も同じくOECD「了解」改訂に伴うものである。この改訂に際しては,「国内船主の自国造船業に対する発注誘因を了解改訂前より強くしないこと」という付帯決議が行なわれ,わが国の計画造船に対する利子補給制度はわが国造船所での建造船のみをその対象としていたので,これが一面において国内市場の保護措置となつていたため,この決議に抵触するところとなつた。このため,46年5月の国会において利子補給法の一部改正を行ない,関連規定を改めて46年6月1日より計画造船という市場の完全自由化を図つた。一方,わが国は1万総トン未満の船舶に7.5%の輸入関税を課しているが,46年に入り,発展途上国に対する関税を撤廃したので,わが国造船業の自由化はほぼ完了したといえる。
  第三番目は45年11月の海運造船合理化審議会の答申に基づき,新海運政策を改定して国内船の建造量を大幅に拡大したことである。これにより,44〜49年度の6年間の外航船建造量は2,050万総トンから2,800万総トンとされた。また,これにあわせて,わが国物資の安定的輸送に貢献する輸出船(仕組船)の建造について十分な配慮を行なうこととなつた。
  第四番目は,同じく海運造船合理化審議会に対し,造船施設整備のあり方を諮問し,その一部について第2節で述べるように,ここ当分の間の強い需要に対応する当面の対策の答申をえたことである。同審議会は,引続き今後の建造需要の見通しと造船施設整備のあり方についての長期計画の検討を進めていくことになつている。


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