1 海洋開発の動向
海外においては,アメリカが1961年以来,海洋開発に意欲的に取り組んできているほか,フランス,西独,英国,カナダ等においても高い関心を寄せ,積極的に取り組んでいる。また,領海問題,大陸棚問題さらには深海底平和利用について各国の利権が絡み,これらの問題は先進国,発展途上国を問わず国連の場を通じて熱心に討議されているが,解決までにはなお相当長期間を要するとみられる。民間企業サイドでは,海底石油の開発が,北海,中東,東南アジア,北米等で引き続き活発に行なわれている。スペース利用等については一部海底沈埋トンネル,海中貯油タンク,海中展望施設等が実現しているが,構想,計画等の段階のものも多く,海洋の調査と技術開発が多い状況である。
わが鼠においては,海洋科学技術審議会が『海洋開発のための科学技術に関する開発計画について』を答申して以来,海洋開発がにわかにクローズ・アツプされて積極的に取り組まれるようになつてきたが,ようやく調査と技術開発に本格的に着手し始めたところである。もつとも,浮揚式海洋構造物の分野で,これまでの技術の延長的なものについては,わが国の造船技術が高く評価され,造船業界に対する内外からの発注も40年以降増加したが,最近は数量は一時ほど増加せず,むしろ,より高度な技術を使用するものへと変わりつつある。一方,民間企業として直接海洋開発に取り組むため,専門企業が近年数社設立されている。このような情勢を反映するとともに,わが国特有の事情である臨海工業地帯の巨大化,公害防止,陸上地価の高騰等,また,所得および余暇の増大によるレクリエーシヨン等の観点から海洋の開発利用が新たに注目され始めている。
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