1 世界の国際輸送状況


(1) 世界の国際航空輸送

  ICAO(国際民間航空機関)に加盟している120カ国(なお加盟国数は46年10月5日現在122カ国となつた。)の定期航空会社の45年における輸送実績(ICAO推定による)は 〔III−1表〕および〔III-2表〕のとおりである。

  45年の旅客輸送量を前年と比較すると,増加率は旅客数で7%,人キロで11%である。貨物輸送量を前年と比較すると8%増加している。また,世界の定期航空会社の45年の平均利用率は25年以降の21年間で最低となつている。

(2) 国際航空企業の経営および運賃

  世界の航空会社の経営状態をみると,営業収入の面では毎年かなりの増加を示してきており,45年における推定営業収入は180億1,500万ドルに達した。他方,推定営業経費も170億2,600万ドルにのぼり,しかも営業経費の増加率が営業収入の増加率をわずかながら上回つたが,推定営業収益は9億8,900万ドルと,前年に比べ3億6,200万ドル上回つている。
  国際航空運賃については大幅改訂がなされた。46年以降の旅客運賃協定を成立させるために開かれたホノルル会議では,IATA第3地区(アジア,大洋州地域)内運賃および第3地区・第1地区(アメリカ地域)間運賃,ジユネーブ会議では第3地区・第2地区(ヨーロツパ,中近東,アフリカ地域)間運賃の協定が成立した。こういつた協定をみるときつぎのような特徴,背景が浮彫りにされよう。

  第1には日本市場の大きさが著しく認識され,運賃,規則改正にあたつて日本市場に対する特別配慮がされたということである。第2には航空企業にも同様に重くのしかかつてきたコスト・インフレーシヨンの圧力を回避すべくなされた運賃構成の修正であつた。
  これら協定の主たる改正点は次のとおりである。

 イ IATA第3地区

      この地区の運賃改訂の大きな特徴として,団体包括旅行運賃の大幅導入をあげることができる。とくに,日本発香港行,台北行運賃はバルクIT運賃に類似した特別団体包括旅行運賃で,この方面へ向かう観光旅客の利便を大きくはかることができるようになつた。普通運賃についてみると往復割引の廃止が目立つ。下記の太平洋区間往復割引の廃止とともに,これで全国際路線地域から往復割引制度が姿を消すことになつた。

 ロ 第1・第3地区間

      特別運賃の改訂においての新しい魅力としては,14日以上35日以内の個人旅行に適用になる環太平洋包括旅行運賃の設定があつた。バルクIT運賃制度は日本の潜在観光市場を顕在化させて画期的成功をおさめ,この運賃の適用条件も日本の観光市場により適合させる目的に緩和された。つぎに,普通運賃についてみると,アジア発着片道運賃について値上げ修正がされ,イで述べたように往復割引の廃止がされた。なお,日本発着の季節による運賃差が廃止され,適用運賃が一本化された。

 ハ 第2・第3地区間

      特別運賃についてみると下記普通運賃と同様,第1地区経由の日本発着旅行にも団体包括旅行運賃が設定された。また,新設された日本発世界一周団体包括旅行運賃は,従来の運賃に比べ20〜30万円程度も安くなり,大いにうけている。また,従来冬季期間中だけであつたバルクIT運賃がその他の期間にも導入された。
      普通運賃については,第1地区経史のアジア・ヨーロツパ間通し運賃が新設されたことが第一にあげられる。この地区の運賃改正をみると,原則として5%の値上げがされているが,日本発着運賃については例外とされ,わずか1.80米国ドルという小幅値上げにとどめられているのは,拡大しつつある日本市場に対する特別配慮があつたといえよう。
     注(1) バルクIT運賃とは,一定座席を単位とした団体運賃で,航空会社は旅行業者にまとまつた座席を販売し,旅行業者は,この運賃に地上経費と利益を加算し,包括知行国体を対象として一般に販売するものである。
     注(2) 包括旅行とは,航空輸送のみならず,鉄道,バス等の地上輸送およびホテル等の地上手配を含めた計画に基づく旅行をいう。

(3) 外国航空企業の乗入れ状況および二国間協定

 イ 外国航空企業の乗入れ状況

      46年7月1目現在,わが国に乗り入れている外国定期航空の乗り入れ状況は 〔III−4表〕のとおりである。

 ロ 二国間協定

      新たにある国に定期便が乗り入れる場合には,その国との間に航空協定を締結するのが通例であり,また航空協定が締結された後においては,路線を改めるための付表改訂および運航便数等輸送力に関する問題等について,両国の航空当局間で協議して決定されるのが通常である。
      わが国は現在仮署名のものも含めて29カ国との間に航空協定を締結しており,これに基づいてわが国の航空企業は世界の33地点へ定期便により乗り入れを行なつており,これらの路線網をさらに拡充し,より実効あるものにするため,諸外国と鋭意航空交渉を行ない,わが国航空権益の拡充と秩序ある国際民間航空の発達を図つてきている。
      最近わが国の行なつた航空交渉の傾向としては,新規の航空協定締結交渉より,むしろ路線修正,便数等に関する交渉が多い。45年度においては,ソ連(5月,8月および46年1月)西ドイツ(5月),韓国(6月),スイス(7月),インド(7月),ベルギー(8月),アメリカ(9月および12月),マレーシア(9月),中華民国(9〜10月),シンガポール(11月),オランダ(46年1月),イタリア(46年2月)等との間で,また46年度において,レバノン(4月および7月),ビルマ(5〜6月),メキシコ(7月)等との間で交渉を行なつた。
      ソ連との3回にわたる交渉においては,わが国航空企業の航空機および乗組員による国際航空業務(いわゆる自主運航)をシベリア経由で行なうことについて合意された44年2月の交渉以来懸案になつていた日ソ間局地沿岸航空路の開設の問題が討議された。この結果,46年1月の交渉において,新潟・ハバロフスク間の新しい路線を開設することが合意された。なお,新潟空港の整備が完了するまでの暫定措置として,47年9月30日まで,新潟にかえて東京を使用できることがあわせて合意された。また,同協議において,わが国航空企業が46年4月1日から,東京からモスクワ経由コペンハーゲンまたはアムステルダムへ週1便,ソ連航空全業が46年3月28日から,コペンハーゲンからモスクワ経由東京へ週1便の運航を行なうことが認められた。
      アメリカとの2回の交渉においては,アメリカ補助航空企業が46年に行なうチヤーターに関する間題の解決を図ることおよび,44年4月アメリカ合衆国政府が行なつたアメリカ側航空企業の太平洋への大量の進出を内容とする「太平洋ケース」とよばれる免許審査事案の決定が,わが国航空企業の競争上の立場に著しい影響を及ぼすことに対処するため,日本側路線の拡充を図ることを主たる目的として,両国間の民間航空に関する全般的問題の再検討が行なわれた。チヤーター問題については,双方の主張する便数枠にくい違いがあり合意に達しなかつたが後にわが国は一方的に便数枠を設定した。
      また,日本側路線権の拡充については,大圏コース上の地点としてのシカゴの追加等を要求したが,アメリカ側の同意を得られなかつた。残された問題については,46年度中に再び協議を行なうこととなつている。
      オランダとの交渉においては,両国の指定航空企業が,46年4月1日以降,モスクワ経由の東京・アムステルダム間において,暫定的に運航を行なうことを認めることに合意した。
      ビルマとの交渉は,新たに航空協定を締結するために行なわれたものである。この交渉は,日本に乗入れを希望するビルマ側の要請により開催されたもので,2週間にわたる交渉の結果,協定案文について合意がみられ46年6月7日こ仮署名が行なわれた。今後,両国においてそれぞれ所要の手続を経た後発効することとなり,この結果,日本・ビルマ間に新たに定期航空路が開設されることとなつた。


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