1 国内運賃の動向


  46年度を中心とする旅客運賃の動向についてみると,私鉄・乗合バスについては,所得水準の向上による自家用車の増加,大都市における交通渋滞,大都市周辺以外の地域における沿線人口の減少等により旅客需要が減少傾向にあるため収入が伸び悩んでいるのに対して,営業費用は人件費の上昇等により著しく増加している。このため企業の合理化努力にもかかわらず,経営収支が悪化しているので,46年5月から47年5月にかけて中小私鉄42社と乗合バス50社の運賃が改訂された。ハイヤー・タクシー運賃についても,営業収入の増加に比して,人件費等の諸経費の増加が上回つているため,全国125ブロックのうち49ブロックについては,46年4月から47年5月にかけて,六大都市については47年1月に改訂された。
  このほか,46年4月から47年5月にかけて内航旅客船150社について運賃改訂がおこなわれ,航空運賃については,46年8月に往復割引き運賃(5日以内往復に適用)が廃止された。
  一方,貨物関係についてみると,貨物自動車については,景気低迷により輸送量の伸びが鈍化しているのに対して,労働需給のひつ迫等により,人件費が大幅に上昇したのに加え,資本コストも上昇しているなど収支両面から強い圧迫をうけ,業績は急激に悪化している。このため,46年4月から10月にかけて路線トラック420事業者,区域トラック20,770事業者について運賃改訂がおこなわれた。
  内航海運については,46年5月,運輸大臣が航路および貨物(7航路3品目)を定めて,モデル的に設定する標準運賃が5年ぶりに改訂された。これは,企業によつて,船舶の大型化,専用船化,自動化等による経費の上昇分を吸収する努力がなされてきたにもかかわらず近年の船価の上鼻,船員費をはじめとする人件費の高騰等による諸経費の上昇,さらに公害防止,安全対策などの新しい負担が加わつて,経営内容が悪化してきたためである。
  このほか,港湾運送関係では,1,622社について,46年6月に船内荷役料金,はしけ運送料金,沿岸荷役料金が改訂された。倉庫料金については,同じく46年6月に普通倉庫荷役料金が改訂され,冷蔵倉庫についても,47年6月に冷蔵倉庫荷役料金が改訂された。
  国鉄については,悪化の度を加えている財政を再建するため,国等の財政措置の強化,国鉄の合理化努力の徹底とあわせて運賃水準の適正化を図ることとして,第68回通常国会に「国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案」が提案されたが審議未了のまま廃案となり,国鉄財政再建方策の確立と運賃水準の適正化は今後の課題として残された。


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