2 交通公害の現状


  交通活動は多量の土地,空気等の自然環境資源を消費して行なわれるので,市民生活と密接した場での騒音,大気汚染や海洋汚染などの公害を発生させる原因のひとつとなつている。昭和46年に総理府が行なつた「公害問題に関する世論調査」によると,最近5年間に公害で被害を受けている者のうち,交通機関を発生源としてあげた者が45%もある。これを公害の態様別にみると,騒音,振動,大気汚染によつて被害を受けた者のうち,交通機関を発生源としてあげたものがそれぞれ78%,68%,45%あり,騒音,振動,大気汚染において交通機関による割合が高くなつている。
  自動車による公害には,排出ガスによる大気汚染,騒音,廃車公害などがある。
  排泄ガスによる大気汚染については,東京都内の道路沿い3測定点の測定結果によると, 〔1−6−3図〕のように規制措置のとられた一酸化炭素濃度は44年以降低下してきているが,窒素酸化物と炭化水素はいぜんとして高い水準にある。光化学反応による大気汚染は,窒素酸化物と炭化水素が原因物質となるとみられており,自動車がその主な発生源のうちのひとつとなつている。光化学反応による汚染は,次第に広域化する傾向にあり,被害者の数も急増している。

  騒音については,46年に東京都が行なつた世論調査によると,自動車による公害が付近で起きていると答えた者のうち,騒音による被害をあげた者が最も多く,自動車公害による被害の意識面では排気ガスによる被害を上回つている。
  また,自動車の廃棄台数が年々増加してきており,欧米のように廃車処理に関する公害が問題となつてきつつある。
  鉄道では,高速走行時に発生する新幹線騒音が問題となつており,新幹線建設に反対する住民運動が盛んになつてきている。
  航空機騒音については,ジェット機の離着陸時の騒音は,飛行場周辺において80ホン以上に達するので,市街地と接する飛行場の周近ではとくに問題となり,大阪国際空港,東京国際空港付近の住民から国を相手に訴訟が提起されている。
  海洋汚染では,わが国の近海に投棄される産業廃棄物は近年500万トンをこえ,未処理のまま海洋に投棄されるふん尿も約500万Klあり,船舶からの廃油の排出は46年において約20万トンになるものとみられている。46年中に海上保安庁が把握した海洋汚染件数は1,621件に達し,またその分布をみると 〔1−6−4図〕に示すように,わが国のほとんどすべての沿岸海域にわたつている。

  そのうち油による汚染発生件数が約80%を占めており,また,東京湾,伊勢湾,大阪湾および瀬戸内海での汚染発生件数が全海域における汚染発生件数の72%を占めている。近年あらわれた特異な汚染としては,内海,内湾等における赤潮の発生,あるいは,タンカー等からの流出油によるものとみられる廃油ボールのわが国沿岸への漂着などがある。


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