(2) 騒音対策


  交通騒音としては,自動車騒音,航空機騒音,新幹線騒音等があげられる。これらの中で市民の生活環境保全上最も身近な自動車の騒音については46年,騒音にかかわる環境基準,自動車騒音の許容限度,交通規制の要請基準の設定が行なわれた。

(イ) 自動車騒音対策

  モータリーゼーシヨンの進展に伴い,自動車騒音が生活環境に悪影響をもたらしているため,早急に具体的措置を講ずる必要性が認識されるにいたつた。このため,45年12月,騒音規制法の改正により特殊車以外のすべての自動車および原動機付自転車を規制対象とした。具体的措置としては,道路運送車両法に基づき,これらの規制対象車両に対して完成時における検査および定期点検整備が義務づけられている。
  また,騒音規制のための交通量制限措置も実施できることとなつた。これらの諸施策により,自動車騒音対策は大きな進展をみたが,さらに技術面での改良,路面整備,都市構造の改善等の対策を急ぐ必要がある。

(ロ) 航空機騒音対策

  わが国の航空旅客輸送量は,42年以降平均30%を越える高い伸びを示し,これに即応して飛行便数の増加や航空機の大型化が図られてきた。しかしながら,このような航空の発展は,空港周辺の居住環境を脅かすようになつてきている。
  航空騒音から空港周辺の住民の生活環境を守るための施策としては,夜間の発着制限やエンジンテストの制限を強化する一方,騒音障害防止措置も強化されている。
  夜間の発着の制限については,たとえば大阪国際空港に関しては原則として夜10時30分以降ジエツト機の発着を禁止するなど世界でも最も厳しい規制を行なつており,これにより空港周辺住民の生活環境が守られるように配慮している。また,空港周辺の病院,学校等の防音工事に対する補助や民家の移転補償が行なわれている。今後さらに民家の防音工事や,移転補償促進のための具体策が検討されようとしている。民家の防音工事については,47年度から実験調査を行なうことになつている。また,航空機騒音対策強化のために地方公共団体の財源拡充が図られ,航空機燃料税の15%譲与が47年度から行なわれることになつた。
  航空機の高速性には多大なメリツトがあるが,超音速機(SST)の導入については安全性と騒音問題等を含め総合的な検討,評価が必要であろう。

(ハ) 新幹線騒音対策

  新幹線の発達は,市民に多大な便益をもたらしてきているが,今後さらに促進されようとしている新幹線建設に対して,新幹線騒音は良好な生活環境を破壊し地域住民の福祉向上に反するものであるとして建設反対の声がもち上つている。また,東海道新幹線に対しても騒音に関する苦情件数がふえてきている。これら住民の声を受けとめ,国上の発展,国民の利便の増大と地域住民の利益との調和をめざして積極的な技術改良を行なつている。
  新幹線の通過時の騒音は,線路から25m離れたところで,無道床鉄桁の場合,100ホン以上にも及ぶ場合がある。騒音防止上重点となるのは発生源対策であるが,鉄道輸送の前提である車輪とレールとの接触による金属音の抑制には,おのずから限界があり,発生した騒音防止について車輪構造面ならびに軌道構造,防音壁等の施設面からの対策をとらざるを得ない。東海道新幹線については,今後一層の技術開発等により対策を講ずると同時に今後建設される新幹線鉄道についても十分騒音防止策を講じて建設されることとなつている。


表紙へ戻る 次へ進む