(3) 海洋汚染防止対策
わが国は,周囲を海に囲まれた島国であり,海と国民生活とは切つても切れない関係にある。蛋白質源を海に求め,海水浴,釣などレジャーも海中心に行なわれてきたわが国の特殊性を考えるならば,現在の海の汚れは,諸外国以上にゆゝしい問題と言わざるをえない。廃油,産業廃棄物,し尿等汚染物質の海洋投棄は,年間1,000万トンに及ぶものと見られている。もはや海がもつ自浄作用は機能しなくなつており,汚染は進む一方である。
このような現状を前にして,まず,42年8月船舶の油による海水の汚濁の防止に関する法律を制定し,船舶から海上に油を排出することを規制した。さらに,きれいな海を"のスローガンのもとに45年12月海洋汚染防止法が制定された。この法律は船舶からの油の排出について,従来の法律に比べその対象海域,対象船舶について大幅な規制の強化を図るとともに,新たに世界に先がけて海洋への廃棄物の排出を原則として禁止するという画期的な内容をもつものであり,47年6月から全面的に施行されている。
諸外国も海洋汚染問題には力を入れており,英国ではタンカーの沿岸航行を厳しく規制しているほか,47年6月にスウェーデンのストツクホルムで開催された「国連人間環境会議」においても海洋汚染防止対策が熱心に検討され,各国が協力して全地球的な監視体制の確立をめざして努力することを申し合わせた。
なお,不幸にしてタンカーによる油濁事故が生じた場合の補償については,船主の無過失責任を規定した国際条約および油濁補償のための国際基金の設立をうたつた国際条約の二つの国内法化が検討されている。
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