3. 労働問題


  国鉄には,現在,総評系の国労(国鉄労働組合)および動労(国鉄動力車労働組合),同盟系の鉄労(鉄道労働組合)等の労働組合があり,47年4月現在,国労21万7,000人,鉄労10万4,000人,動労4万8,700人,その他9,500人計37万9,200人が組合に加入している。
  46年における国労および動労のおもな闘争としては,5月中旬に新賃金闘争(春闘)を,さらに7月には処分反対闘争を行ない,また11月には沖縄協定反対および生産性運動反対闘争を行なつた。このため,46年には約10,000本の列車運休を生じた。
  47年の春闘は,公労協の統一行動としては4月19日,20日の第1次行動に始まり,第2次の4月27日,28日まで行なわれたが,国労および動労は第1次行動と第2次の27日に参加したほか,この間4月23日から27日にかけて順法闘争を行なつた。本年春闘のヤマ場となつたのは,国労および動労が共闘により4月27日に行なつたストライキである。このストライキは,首都圏における国電部門をはじめ全国的に行なわれ,全国の旅客,貨物輸送に大きな影響を与えた。しかし,4月27日公労委調停委員長見解として基準内賃金の7.1%プラス2,500円(3公社5現業平均7,566円,国鉄8,097円)の引上げ案が提示されたことにより,同日20時に至りストライキは中止された。なお,この春闘だけで約14,000本の列車運休を生じた。また,前述の調停委員長見解の金額は,労使委員の賛成が得られず,調停不能に終つたため,仲裁に移行した結果,5月27日調停委員長見解と同一内容の仲裁裁定が行なわれ,春闘は事実上終つた。
  しかしながら,国鉄について,この裁定を実施するためには,本年度約752億円の財源を要するため,運賃改定による増収(1,788億円)および国等の大幅な助成を前提とした47年度予算の執行が必要であり,このためには国有鉄道運賃法及び日本国有鉄道財政再建促進特別措置法の一部を改正する法律案の成立が必須の要件であつた。従つて,同法案が国会で審議中であつた6月6日の時点では予算上仲裁裁定の実施が可能であるとは断定できなかつたので,公労法第16条第1項に該当すると認め,同条第2項の規定に基づき,国会の議決を求めた。
  同法案はその後6月16日に廃案となり,一方公労法第16条議決案件は実質審議に至らず,継続審議となつて現在に至つたので政府はこの新らしい事態に対処するため6月23日の閣議において緊急やむを得ない措置として仲裁裁定を完全に実施する方針を確認するとともに,その財源措置について早急に検討することとした。
  その後,仲裁裁定の実施を可能とするための財源措置について検討した結果9月1日「国鉄の徹底した合理化努力による経費の捻出と合せ当面緊急かつ特別の措置として,長期資金の融資(803億円),工事費補助金(37億円)の交付を行なうことにより所要の財源措置をとるとともに,早期に国鉄の再建計画を確立する方針を確認する」ことが閣議了解された。これにより仲裁裁定の実施が可能となつたので,この旨が衆・参両院議長に通知された。これにより去る6月6日国会に提出された公労法第16条議決案件は,自然消滅した。


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