2. 運貨問題
(1) 大手私鉄
大手14私鉄については,輸送力増強及び運転保安工事の実施に伴う資本費の増大と毎年のベース・アツプに伴う人件費の増加による収支の悪化を考慮して,45年9月に増収率23.1%の運賃改定を認めたが,物価または家計への影響等を考慮して運賃水準を極力低位に抑えたこと,人件費の増勢が予想を上回つたことなどの理由から,合理化,省力化の努力にもかかわらず,46年度において202億円の欠損を計上するに至つている。
なお,名古屋鉄道は47年5月,その他の13私鉄は47年7月に平均増収率30.2%の運賃改定の申請を行なつた。
(2) 交通営団
交通営団は,都市輸送の重要なにない手として鋭意地下鉄道を建設中であるが,その建設費は年々増大し,その資本費は人件費の高騰と相まつて経営収支の悪化に拍車をかけており,この結果46年度においては58億円,累積では148億円もの大幅赤字を計上するに至つている。営団の運賃は,41年1月,増収率20.8%の改定が行なわれて以来据え置かれてきたが,47年7月,増収率28.4%の改定を認めた。
(3) 公営
大都市における公営においては,従来路面交通を担当してきた軌道が,路面の渋滞と収支悪化に伴つて順次廃止され,代つて地下鉄の建設が推進されているが,地下鉄の建設には,膨大な投資を必要とし資本費負担が巨額にのぼるため,いずれも大幅な赤字を計上している。
このうち,名古屋市地下鉄の運賃は,47年7月,増収率43.2%の改定を認めた。
なお,路面電車については,46年度は鹿児島市について運賃改定を認めただけであるが,47年7月,京都市および名古屋市について,増収率それぞれ73.9%,14.7%の運賃改定を認めた。
(4) 中小私鉄
中小私鉄は,大都市周辺のものを除いては,沿線人口の減少,道路整備・所得水準の向上による自家用車の増加等により旅客の輸送需要は年々減少の傾向にあるため,収入も伸び悩んでいる。一方,営業費は各年の大幅な人件費の上昇等により著しく増大しており,この結果経営収支は悪化し,大半が赤字を計上している。
このような窮状を打開するため,各社とも積極的な合理化,省力化を実施しているが,これにも限度があるため,46年度においては36社の運賃改定を行なつた。
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