1 世界海運市況


  昭和46年の世界経済は,先進国の全般的景気停滞とインフレの慢性化,ドル切下げを中心とする多国間通貨調整などの世界情勢を反映し,前年に比べてやや沈滞気味の傾向を示した。
  46年の世界貿易額はこのような世界経済の伸び悩みにより,輸出(F.O.B.)においては3,096億ドルと45年に比べて11.0%の増加に止まり,前年の伸び率14.8%に比べると,38ポイント低下した。
  一方,46年の不定期船,油送船運賃市況は,前年のブームから一転して下落の一途をたどつた。不定期船市況は45年10月をピークとして急激な下落をたどり,46年の後半に至つてやつと下降のカーブがゆるくなり,落ち着いた状態になつた。ノルウエイジヤン・シツピング・ニユーズの運賃指数(40年7月から41年6月までの平均=100)でみると,45年10月には128.9であつたものが,46年12月には70.1となり,58.8ポイントも低下して年平均では81.1と45年の119.4に比べて38.3ポイント下回つた。
  油送船市況も45年10月をピークとし,不定期船市況以上の大暴落をとげた。ノルウエイジヤン・シツピング・ニユーズの運賃指数(ワールドスケール)でみると,46年の平均は107.2で,45年の196.1に比べて,88.9ポイント下回つた。このような運賃市況の暴落の原因としては,世界的な景気の後退があげられるが,不定期船市況においては数年来急激な増加を続けてきたわが国鉄鋼業の減産に伴う鉄鉱石,石炭などの需要の大幅な低下,また油送船市況においては,欧州における暖冬異変などによる石油需要の伸びの鈍化が直接的な原因と考えられる。
  また,定期船の運賃は,近年の船員費をはじめとする船舶諸経費の異常な高騰により世界的な上昇傾向にあり,日本関係の定期船運賃同盟についても,北米西岸航路往航21%増,北米東岸航路往航17.5%増豪州航路往航10%増,欧州航路往航10%増,南米東岸航路往航10%増など,46年に運賃値上げをした同盟が多い。


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