1 概況


  46年のわが国経済は45年下期に引き続いて景気後退を続け8月のアメリカのニクソン声明による一連のドルショックなどにより低迷の度を強めることとなつた。このような国内景気の低迷から,わが国の貿易は輸出に対する圧力が働き,一方輸入は伸び悩みを続けた。この結果,46年のわが国の貿易量は輸出5,012万トンと前年に比べ25.1%著増したのに対し,輸入は4億8,919万トンとわずか4.6%の増加にとどまつた。
  47年3月末におけるわが国の外航船腹量(3,000総トン以上の鋼船)は1,258隻,2,587万総トンとなり,前年同期と比較すると,総トン数では328万トン増(14.5%増)と順調に増加したのに対して,隻数ではわずかに減少した。これは計画造船を中心として大型船舶が建造されるとともに,中小型船舶の海外売船が増加しているためである。
  46年における邦船および外国用船による輸送量,運賃収入は 〔II−(I)−2表〕のとおりである。邦船による輸出入,三国間の輸送量の合計は2億6,679万トンと45年に比べ9.5%の増加にとどまり,前年の15.4%に比べると伸び率が大きく低下した。これは輸出および三国間の輸送量が増加したにもかかわらず,全輸送量の8割以上を占める輸入の輸送量が,5.7%増と微増にとどまつたためである。このため,46年のわが国の海運会社の運賃収入も前年に比べ,10.4%の増加にとどまつた。

  一方,わが国の海運会社が手当てした外国用船は,最近急激に増加しており,46年の外国用船による輸送量および運賃収入は前年に比べてそれぞれ24.5%,30.8%増加し,外国用船による輸送量は邦船による輸送量のほぼ半分に相当している。
  46年の邦船積取比率は 〔II−(I)−3表〕のとおり,わが国貿易量の伸びが輸出では著増,輸入では微増という状況を反映して,輸出では34.2%と前年に比べて4.4ポイント減少し,外国用船を含めた積取比率でも2.6ポイント減の52.0%となつた。また,輸入では前年に比べて0.4ポイント増の45.0%となり,外国用船を含めた積取比率では2.2ポイント増の65.2%とわずかに改善された。

  46年の海運関係国際収支は 〔II−(I)−4表〕のとおり,受取18億9,300万ドル,支払26億5,800万ドルで,差引7億6,500万ドルの赤字となり,45年に比べて3億3,000万ドル赤字幅が縮少された。これはわが国経済の低迷に伴つて輸入量が対前年比4.6%増にとどまつたのに対して,計画造船を中心とした船腹拡充によつて,外国船へ支払う貨物運賃が45年より減少し,また邦船の輸出および三国間輸送の活発化によつて受取貨物運賃が増加したことなどによるものである。


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