1 沖縄における旅客航路事業の現状
沖縄における旅客航路事業は,大別して沖縄本島・本土航路,沖縄県内における幹線航路である先島航路(沖縄本島・宮古島・石垣島)および沖縄本島,宮古島,石垣島と小島しよ部を結ぶ離島航路に分けられる。
沖縄・本土間の旅客定期航路は,現在那覇を起点とし,東京,阪神および鹿児島を結ぶ3航路があるが,昭和46年度における海上旅客輸送量は,約28万人で前年度に比べ0.1%増にすぎなかつた。今後は沖縄経済の発展,観光開発が急速に進められ,また,50年には国際海洋博覧会が開催されることでもあり,沖縄・本土間の人的,物的交流は増大するものと思われる。同航路は,航空機と並んで沖縄・本土間を結ぶ幹線輸送機関として重要な役割をになうものであり,今後とも輸送秩序の維持を図りつつ,需要の増大と変化に応じた船腹の増強と船質の改善を図つていく必要がある。
沖縄県内の海上旅客輸送量は,昭和45年において94万人で前年比1.9%増であつた。
沖縄県内の航路は,港湾,航路,航行援助施設などの基礎的施設の整備が不十分であるため,船舶の大型化をはじめとする航路の近代化が遅れているとともに,事業者の大半が個人事業者で企業基盤がぜい弱なことに大きな問題がある。とくに先島航路では,経済面より近代化された新鋭船舶の投入する余力がないことなどのため,同区間の航空機利用客の激増とは逆に旅客輸送量は減少する傾向にある。
したがつて今後は,これら事業者の集約統合を行なつて経営体制の強化を図るとともに受入港湾施設の整備と歩調を合せて,航路体系全体の再編合理化を図る必要がある。なお,差し当つて,石垣島を用心とする島しよ間航路については各島がさんご礁に囲まれて沿岸地域が遠浅であり,かつ潮の干満がはげしいという自然的特殊事情があるため,本土政府の援助と当時の琉球政府の指導のもとにホーバークラフトを投入し,あわせて事業の集約統合と運航系統の改善を行なつたうえ,47年7月からその就航をみるに至つた。
今後沖縄の島しよ間航路の近代化を推進するため,旅客船の建造については,沖縄振興開発金融公庫が長期低利の資金を融通することとなつた。また,赤字経営の離島航路に対しては,離島航路整備法に基づき本土並みの補助金が交付されることになつており,47年度予算では36事業者39航路に対し,2,730万円の補助を行なう予定である。
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