2 輸送革新と港湾運送事業
(1) 輸送革新の港湾運送事業に与える影響
港湾における輸送革新は,コンテナ化に代表されるようにその規模と速度が予想をこえた形で進んでおり,在来の港湾運送の各分野に種々の影響を与えている。
まず,はしけの構造的な余弱化がある。これは,わが国経済の拡大を背景とする港湾取扱貨物の急増に対応するため,岸壁整備の不定をはしけによる沖取で補つてきたが,近年岸壁整備の進展により接岸荷役が一般化し,また,港湾における技術革新が急速に進展したためでありこの傾向は一層進むものと思われる。
また,さきに述べたようなサイロ等の専門ふ頭の整備やコンテナ化により常に貨物の流れが変り,仕事を失う事業者および労働者が生じることとなる結果,全体の取扱量が増加しているため直ちに港湾運送量の総量が極端に減少することはないと言いながらも,事業全体として職域不安感を強くしている。
このため,昨年のラツシユ船入港阻止闘争や本年春の反合理化闘争のように労働看および事業者の職域不安に起因した港湾の技術革新に反対する動きが出て来ており,港湾の物流円滑化の観点からも放置しえない事態となつている。このような状況は,英国,米国等の諸外国の港湾にも共通しており,コンテナ化等に反対する港湾ストがしばしば発生しているが,国際労働機関(ILO)においてもこの問題が討議きれており,この影響への対応策を内容とした条約が採択される見通しが強い。
(2) 輸送革新に対応した港湾運送事業のあり方
上記(1)のような事態を背景として,流通革新に対応した新しい港湾運送のあり方を検討するため,運輸政策審議会に港湾運送特別委員会を設置し,本問題を諮問し検討した結果,次のような方向で輸送革新に対応する港湾運送制度の抜本的改正と事業の構造改善を推進することにしている。
すなわち,第一に,港湾荷役の技術革新を推進する。このためコンテナ等の専用ふ頭において,物流のシステム主体(船社・荷主等)の意向を尊重した形でのオペレーシヨンを促進するほか,港湾運送事業の資本装備を進めるとともに,構造的に余剰遊休化するはしけを整理する。第二に,在来港湾運送事業について,業種の区分の再検討等制度の合理化を図る。第三に,良質労働力確保のための労働条件の向上を図る。
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