4 沖縄の観光開発
沖縄経済の特色は,(1)過剰人口の圧力(2)基地経済(3)産業のモノカルチヤー的構造の3つに集約されるといわれる。また,圧倒的高さを持つ米軍基地収入,日米両国政府の援助,本土政府による沖縄一次産品に対する特恵措置などから,「人口栄養の経済」ともいわれている。このような沖縄の経済開発にとつて,基地経済からの脱却,本土との格差の縮小,沖縄からの人口流出の防止が大きな課題である。
基地に支えられた沖縄経済の中にあつて,観光は,砂糖,パイナツプルとならび三大産業の一つとして沖縄経済の重要な柱となつており,昭和45年における入域観光客数は172,349人に達し,3,378万ドル(121.5億円)の観光収入をあげ,沖縄の第1の輸出品目たる砂糖に次いで第2位に位置する重要産業となつた。
本土復帰前の沖縄観光を支えていた魅力は,洋酒,貴金属等を安価に入手できるというシヨツピング魅力が第1で,これは観光消費額中に占める土産品代の比率が約6割にも及ぶほど大きいことからも容易にうかがえる。
本土復帰後の沖縄観光はいかにあるべきであろうか。基本的にはシヨツピング魅力および海外旅行魅力を主とする観光から,(1)海洋を中心とする亜熱帯自然景観および(2)沖縄古来の伝統的民族文化(琉球舞踊,紅型等)を観光魅力とするものに転換することであり,このため,自然との調和を図りつつ,観光資源を開発,活用して,全島的に観光ルートおよび観光拠点の整備を図つていくことが必要である。また,沖縄のおかれている地理的条件から,輸送施設および宿泊施設の整備はとくに重要である。ちなみに,復帰時において国際観光ホテル整備法に基づき登録されているホテルは9軒(519室),旅館は12軒(304室)だけで,しかもほとんどが那覇市およびその周辺に集中している。
観光を含めて沖縄振興の具体策は,基本的には,沖縄振興開発特別措置法に基き,振興開発計画に従つて展開されることとなる。とくに観光は,沖縄振興の戦略産業としての地位を担つているので,今後,海洋性レクリエーシヨン地区や民俗文化を生かした施設の整備を海洋と,民俗文化を魅力とする観光開発プロジエクトの中核として押し進めるとともに,昭和50年に開催予定の国際海洋博覧会とも十分に関連づけて,沖縄の開発に資するよう強力な展開が望まれる。
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