1 ホテル・旅館


(1) 整備及び利用状況

  昭和46年末現在の宿泊施設の現況は 〔IV−25−2表〕のとおりである。すなわち,旅館業法の許可を受けて営業しているホテル496軒,旅館78,533軒のうち,外客接遇に適する施設として,国際観光ホテル整備法により登録きれたものはホテル222軒(44.7%),旅館1,187軒(1.5%)である。一軒当りの客室数を比較すると,登録ホテルでは147.7室,登録旅館では43.7室と中規模以上のものが多いのに対し,旅館業法によるホテルは94.9室,旅館9.8室と小規模のものが多い。
  最近においては,大量輸送時代の到来および,地価の高騰等に対処するため,ホテル,旅館の大規模化が急速に進展しており,とくに登録ホテルにおいては客室規模が1,000室をこえるものが東京及び大阪で6軒に及んでおり,また,旅館においても200室以上の規模を有するものの出現が顕著になつてきている。

  これらの宿泊施設の客室利用率は 〔IV−26表〕のとおりでホテルの客室利用率は,45年までは80%台であつたが,46年に至つて73.8%にまで低下した。

  一方,ホテルの利用者は 〔IV−27表〕のように46年は,前年に比べ若干減少した。

  しかし,従来から増加の一途をたどつてきた日本人客の利用の伸びはめざましく,46年にはついに1,000万人をこえた。
  これは,国民所得の増大による生活水準の向上,生活様式の洋風化等により,日本人のホテル利用が定着したことを示している。
  なお,ホテル,旅館の整備状況(登録ベース)は 〔IV−28表〕のとおりで,万国博終了後の京阪神地区において伸び悩みがみられる。

(2) 経営状況

  主要ホテル,旅館の経営状況について,まず,経営規模をみると 〔IV−29表〕のとおり,ホテルでは,99.2%までが会社経営であり,しかも,資本金5,000万円超のものが78.8%であるところからみて大企業的色彩が濃厚であるが,旅館については,個人経営39%,資本金1,000万円以下のものが62.8%を占めていることからもうかがわれるように中小企業の色彩が強く出ている。近年,大企業が観光産業に進出するのに伴い,大規模な旅館も出現しているが,全般的にみると会計処理等においても前近代的経営を行なつている所が多く見受けられる現状である。

  主要ホテル,旅館の収支状況をみると 〔IV−30表〕のとおりで,室料,食事料および飲食料が収入の大宗を占めており,支出の中で大きい費目は,材料費,人件費,支払利息及び減価償却費である。ホテル及び旅館を比較してみると,人件費の占める割合がホテル25.7%に対して,旅館20.5%となつておりホテル旅館の賃金体系の差によるものと思われる。

  次に,主要ホテル,旅館の資産,資本構成をみると 〔IV−31表〕のとおりで,固定資産の占める割合は,ホテル84.2%,旅館82.4%(中旅館)と全産業の43.1%に比べて著しく高い。自己資本比率は,他産業なみに低いが,固定負債についてみると,他産業の倍近くになつている。
  また,主要ホテルと一般企業の収益性を比較すると 〔IV−32表〕のとおりで,利益率は,全般的に低い。その推移についてみると,42年頃一時好転したが,その後停滞している。 〔IV−31表〕でみたように固定資産の占める割合が大きいため,資本回転率が低くなつており,また,借入金の大きいことを反映して利子率が高くなつている。

(3) 国の施策

  来訪外客の誘致活動の推進,日本の国際的地位の向上,経済の発展等に伴う来訪外客の増加に対処するとともに,都市における機能の充実強化を図り,もつて社会経済活動の円滑化に資するため,基盤施設としてのホテルおよび旅館に対して,日本開発銀行(国際観光枠および地方開発枠),北海道東北開発公庫および中小企業金融公庫等の政府関係金融機関が融資を行なつている。これらの融資制度を通じて,来訪外客の大衆化,日本人のホテル利用者の増大等に対処するため,中級ホテル,旅館の整備促進も図ることとしている。
  また,国際観光ホテル整備法に基づき,登録ホテル,旅館に対しては,減価償却資産の耐用年数の短縮および地方税(固定資産税)の軽減という税制上の優遇措置を講じている。
 なお,政府関係金融機関からの融資実績は 〔IV−33表〕のとおりである。


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