2 施設整備の問題点
前項で述べたように,物流拠点施設はそれぞれ幾多の問題点をかかえながらも全体としてみれば徐々に整備が進められているといえる。
しかしながら,最近にいたりこうした施設整備に共通して地価の上昇,公害問題の顕在化などの制約条件があらわれてきており,これらに対する施策次第では,将来の物流環境に大きな影響が出るものと憂慮される。
まず,地価については, 〔3−22図〕のとおり,近年の地価の上昇は著しく,道路用地,鉄道用地などのほか,都市周辺で広大な用地を必要とする各種物流拠点施設の用地の確保は極めて困難となつている。
また,公害問題に対する住民の意識も最近急速に高まつており,物流関係に東京南部(京浜2区)流通業務団地ついても,幹線道路沿線や各種物流拠点施設周辺における大型トラツクの騒音,振動,排気ガス等の公害が問題視されるに至つた。このため,これらの施設の建設に際しては,強力な反対運動が展開されるのが常態となりつつあり,たとえ用地の確保がなされたあとでも,建設に着手できないといつた例が増えてきており,このまま推移すれば,市民生活の基盤である物資の円滑な供給に支障をきたす事態も十分考えられる。生活必需物資の輸送の面において,物流施設はその地域に密着した物流を担つており,いわば地縁的な性格が強く,この点全国的な市場を相手とする工場等とは異なり,他に代替地を求めることが困難な性格のものである。
このため,物流施設の整備をいかに円滑に行うかは,今後の大きな課題であり,このためにも土地問題公害問題に対する適切な対策が望まれている。
更に,これらの施設の整備に当つては莫大な資金が必要であること,投下資本の早期回収が困難であること等の問題があり,財政資金の投入,公共的主体による整備等が,今後ますます必要となろう。
このほか,物流事業者等が個別に物流拠点施設を建設することにより,全体として非効率な配置となつていることもしばしば見受けられるが,物流拠点施設は都市機能の重要な一分野であり,都市計画と整合性のとれた秩序ある配置とすべきである。
特に,土地問題,公害問題等の比較的少ない地方中核都市では,先行的にこうした物流拠点施設を整備していくことが必要であろう。
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