4 協業システムの効果


  最近の企業の物流合理化努力には目ざましいものがあるが,今までに行われてきた物流合理化のほとんどは企業単位の個別システム化である。これによりそれぞれの企業は自社又は系列下の流通経路における施設の重複,交錯輸送を排除し,大ロツトによる輸送が可能になる等の効果を達成できるものの,その成果はあくまでも各企業の範囲内にとどまり,社会全体の物流体系からみればなお交錯輸送を残すなどの非効率な面がある。社会的にみて望ましい,トータルな物流システムを形成するためには,個別企業の限界をこえた協業化が必要である。その一例として,競争的企業(同業者)がそれぞれ個別の集配送システムを持つことを廃止し,共同でひとつの集配送システムを持つ,いわゆる共同集配システムがある。現在実施されている共同集配の例には,次のようなものがある。
  東京浅草の皮靴卸売業(約100社)では,41年から東京及びその周辺地区への配送を1運送業者に委託し,共同配送を実現させている。この運送業者は,毎日卸売業を回つて集荷し,仕分けをしたあと区域内を定時,定ルートのダイヤグラム配送を行つている。共同集配に参加する卸売業者は年々拡大し,1業者当りの出荷量も増大したため,47年度の配送実績は共同配送が開始された翌年の10倍にも達しており,この共同配送が広く普及し,非常に効果があつたことを示している。このほか,東京秋葉原の家庭電器量販店や,東京日本橋の繊維卸売業などでも共同配送や,共同納品,地方発送貨物の一括代行集荷を行つている例がある。
  共同配送による物流合理化の成果は物流コストの低減のほか,労働力入手難への対処,交通混雑の解消,出荷や代金支払等の合理化,物流と販売の分離によるセールス機能の向上などに大きな効果があると言われている。また,共同配送による合理化では,従来個別に委託していた営業用運送を集約化するほか,自家用輸送を営業用輸送に転換する効果を含んでおり,自家用輸送を効率化するひとつの方策となる。
  一部中小企業などでは物流コストに十分な関心が払われておらず,小回りがききにくい,商売の手の内を知られるなどの理由で協業化に対して必ずしも熱心でないところもあるが,全国各地に生まれている流通センターの一部では流通業務を集約化することから共同化が可能となり,共同集配を実現しようとする動きがある。共同集配の大規模なものでは高度なシステム化が必要となるので,これを実施する物流業としてもそれに対応していくにふさわしい能力をもつことが必要となろう。
  協業化を更におし進めれば,一般的な小口貨物輸送のシステム化が可能であり,東京都市圏においては,トラツク運送業者10社が協定しそれぞれの受持区域を定めて一般の小口貨物を交換して配送するシステムを実施している例がある。このようにお互いに適度の競争関係を維持しつつ,全体として地域雑貨輸送システムの最適化を探るべきであろうが,そのためには,荷主と縦の系列に入つている運輸業の横の連携をいかに図つていくかが重要となろう。


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