5 物流情報システム


  社会経済の情報化,知識集約化の進行に伴い物流においてもコンピユータと通信回線を結合して形成される情報システムの活用がその合理化,効率化に大きな役割を果たすものとして期待されている。
  物流における情報システムは,輸送や荷役機器の制御,輸送や保管に伴う手続きの処理,情報提供サービスなどの分野において,迅速で正確な処理,輸送の進行状況や在庫状況に関する情報把握,流通経費の節減,取引上のトラブルの防止などの効果が期待されており,運輸省では次のような情報システムの開発,整備を推進している。

(1) 国際貨物輸送情報システム(ICIS)

  国際貨物輸送情報システム(International Cargo Information System)とは,国際貿易を行うために必要な,あるいはそれに付随する諸データをコンピユータを用いて自動的に編集処理し,通信回線を介して伝送するシステムであり,機能的には次の2つのシステムに分けられる。

 イ 国内情報処理システム

      このシステムは,国際貿易で使用される送り状(インボイス),航空運送状(AWB),積荷目録(マニフエスト)等に記載される諸データを,国内における貿易関係手続きのために,自動的に編集,処理する情報システムである。現在,このようなシステムの整備の機運は国際的に盛り上がりつつあり,英国には,輸入手続の処理に関して,ロンドンのヒースロー空港にLACES(London Airport Cargo E.D.P. Scheme)のシステムがあり,フランスにはパリの3空港にSOFIA(Systeme d'Ordinateur pour le Fret International d'Aerian)のシステムが計画中であり,49年中に稼動開始する予定である。

 ロ 国際伝送システム

      このシステムは,国内情報処理システムにより処理された諸データを,相手国における貿易手続の便宜のため,通信回線を介して,国際間において伝送するシステムである。本年3月には,米英間において貨物データ伝送テストが行われたが,これは国際間におけるデータの伝送テストを行いながら問題点を抽出し,国際貨物輸送情報システムの整備を進めていくという発想に基づくものである。米英間のテストに続いて現在,日米の両運輸省間において同様のテストの実施が計画されている。

(2) 国鉄の貨物情報システム(FOCS.EPOCS)

  貨物(コンテナ)の運送予約,貨車の輸送情報の取扱い等をコンピユータ化し,到着予報等の情報を着荷主に提供し,到着日時を明確化することを自的として,国鉄では,地域間急行貨物列車(48年10月現在1日当り266本)には地域間急行貨物情報システム(FOCS)を既に実施しており,更に49年度中にはコンテナ情報システム(EPOCS)を稼動開始する予定であり,更に53年度を目途として全貨車の位置,状態を把握するシステムの確立を進めている。

(3) 貿易関係書式の標準化

  物流の合理化に大きな影響を及ぼすものとして,物流に関する書類面における標準化,簡素化が検討されている。書類手続の最も煩雑と考えられる国際貿易手続について,ECE,ECAFE,IATA等の国際機関が調査研究を進めており,これをうけて各国は貿易手続簡素化のための技術機関を設けて逐次実行に移している。我が国においても,15の関係団体から成る貿易関係書式標準化委員会が,48年2月には貨物運送状(B/L),送り状,輸出申告書等のワンラン・メソツドによるマスターシートの使用テストを実施するなど,書類標準化の検討が進められている。


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