6 新貨物輸送システムの開発


  地域内貨物輸送は,トラツク輸送にほぼ全国的に依存している結果,道路交通の混雑・渋滞,交通事故の危険性や公害問題,労働力不足の深刻化などから円滑な輸送の確保は今後更に困難性を増すであろう。
  また,東海道ベルト地帯のような貨物輸送の集中する幹線では,在来の鉄道,高速道路による対応ではいずれ限度に来るものと考えられる。新貨物輸送システムの開発は,このような背景のもとに進められており,増大する輸送需要を吸収するとともに,路面交通との分離によつて交通事故,公害を防ぎ,交通渋滞から解放させ,更に労働集約性などの従来の交通手段の欠陥を克服することをめざしている。新貨物輸送システムには,目的により,都市間幹線輸送に用いられるもの,都市内集配に用いられるもの,廃棄物輸送に用いられるものなどがあり,現在,我が国においてその実用化のための研究が進められているものは次のとおりである 〔3−31表〕

(1) チユーブ輸送システム

  チユーブを敷設して,その中に貨物,コンテナあるいはトラツクを載せた台車を走行させるものである。移動方式は,台車毎にリニアモーターを取り付ける方式と,ポンプで空気の流れを作り台車を流す方式が検討されている。前者は東海道幹線輸送システムとして国鉄が研究中のものであり,後者は都市間幹線輸送のほか,工場の組立ラインや郵便物配送,廃棄物輸送にも適用が可能である。

(2) ベルトコンベアシステム

  ベルトコンベアは,従来工場内や鉱石類の短距離輸送に利用されてきたが,高速化や長距離化が進んだことにより,鉱石類の輸送用では,高知県の鳥形山に全長23kmのものが,外国(スパニツシユサハラ)には全長100kmのものが実用化されている。このように近年技術進歩の目ざましいベルトコンベアを,東京大阪間のような長距離幹線に敷設し,コンテナ輸送を行うことにより,幹線の輸送能力を拡大することが,検討されている。

(3) 大都市貨物無人集配システム

  従来から工場や倉庫内で短距離輸送用に使用されているものにトウコンベアがある。トウコンベアとは貨物を載せた台車をワイヤやチエインなどで牽引するものであり,台車を上からつる方式と床を走らせる方式とがある。これを,高速道路下あるいは地下に設置したチユーブの中を通すことにより,小口の貨物の都市内集配に使用することが検討されている。

(4) 廃棄物真空輸送システム

  ダストシユートに真空パイプを直結し,吸引工場と結ぶシステムで,10年程前にスエーデンで開発され,外国ではいくつか実現化されている。吸引工場に集められた廃棄物は,隣接する焼却場で処理されるか,コンテナでトラツクにより輸送される。この方式により,トラツクの騒音や非衛生的な作業から解放されるなどのメリツトがあり,最近日本でも新しく建設される団地などで導入が検討されている。
  新貨物輸送システムについては,最大の課題である末端の積卸しシステムの開発をはじめとして,運行管理,情報処理,既存の輸送手段との連携などを一体としたシステムとして開発する必要があり,その他,慎重な需要調査に基づく経済性の検討やシステムを導入した場合の社会的・経済的影響の検討を十分に行いつつ積極的に推進することが望まれる。
  物流の近代化,合理化はこの章において述べたように関係各方面の努力の結果,個々の企業間ないしは企業系列内においてはかなり進展してきたといえるが,物流過程全般を通してみた場合は必ずしも十分ではない。これは物流が流通システムのサブシステムであり商流の合理化のいわばしわよせを受け易い市場構造を形成していることに主として起因すると考えられる。また,我が国の陸上輸送機関はどちらかといえば,旅客輸送を中心として整備されてきたこと,交通安全の確保,交通公害の防止の観点からともすれば貨物輸送が規制の対象とされてきたことなどが,これに拍車をかけているといえる。加えて都市内交通の混雑,物流関係施設の用地難,労働力不足があり,このまま推移すれば今後も増大すると予想される物流需要を控えて物流は遠からず,その機能を全うしえなくなることが憂慮されるに至つている。このため現在諸施策が講じられつつあるが,物流が社会問題,都市問題に深いつながりを持つていることを考慮するなら,事務所機能の分散などによる交通需要要因そのもののコントロール,商慣習の変革などの流通機構の改善,省物流への協力など消費者の意識の転換などがなければこの解決は因難であることに留意する必要がある。


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