2 運賃問題
(1) 大手私鉄及び交通営団
大手私鉄14社については,45年10月に運賃改定を行つたが,輸送力増強工事及び運転保安工事等の実施に伴う資本費の増大,その後の大幅なベースアツプに伴う人件費並びに諸経費の増加により鉄軌道業の経営は極度に悪化し,鉄軌道業収支をみると,46年度においては183億円,47年度においては342億円の欠損を計上するに至つている。
このような経営の悪化にかんがみ,その経営基盤の強化を図るとともに輸送力増強工事を達成し,旅客輸送本来の使命に応えることを理由に,47年5月から7月にかけ14社平均で普通運賃26.9%,通勤定期45.3%,通学定期30.0%の改定率の運賃改定申請が行われた。
交通営団については,都市交通の重要な担い手として鋭意地下鉄を建設中であるが,建設費は年々増大し,その資本費は,人件費の高騰と相まつて経営収支の悪化に拍車をかけている現状である。このような状況に対処して47年8月に増収率28.4%の運賃改定を行つた。
(2) 大都市の公営交通では,路面電車が路面の渋帯と収支の悪化に伴つて順次廃止され,代つて地下鉄の建設が推進されている。しかし,地下鉄の建設には膨大な投資を要し,資本費の負担が巨額にのぼるため,いずれも大幅な赤字を計上している。このため,47年度においては,名古屋市(増収率43.2%),大阪市(増収率43.8%)及び東京都(増収率26.7%)の地下鉄の運賃改定を行つた。
なお,47年11月には横浜市営地下鉄の開業に伴い旅客運賃を制定した。路面電車については,47年度には東京都,名古屋市のほか4市電の運賃の改定を行つた。
(3) 中小私鉄
中小私鉄は,大都市周辺のものを除いては,沿線人口の減少,所得水準の向上による自家用自動車の増加等により旅客の輸送需要は年々減少の傾向にあるため改入も伸び悩んでいる。一方,営業費は,毎年の大幅な人件費の上昇等により著しく増大しており,この結果,経営収支は悪く,大部分が赤字を計上している。このような窮状を打開するため,各社とも積極的な合理化,省力化を実施しているが,これにも限度があるため,47年度においては,33社の運賃改定を行つた。
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