1 概況


  昭和47年の我が国貿易は金額ベースでみると輸出286億ドル,輸入235億ドルと前年に比べそれぞれ19.0%増,19.1%増と大きな伸びを示した。しかし,トン数ベースでみると輸出4,958万トン,輸入5億1,288万トンと前年に比べそれぞれ1.1%減,4.8%増と伸び悩んだ。このように金額ベースで大きな伸びを示したにもかかわらずトン数ベースで伸び悩んだ理由としては,金額の伸びには輸出では円切り上げに伴うドル表示価格の上昇,輸入では海外諸国のインフレなどに伴う輸入価格の上昇による輸出入金額の名目的な増加が含まれており,また,トン数でみた場合,輸出では輸出量(トン数ベース)の4割以上を占める鉄鋼の輸出量が前年に比べ9.5%減少し,輸入では原油の輸入量が前年に比べ12.0%増加したものの,鉄鉱石3.0%減など原油以外の大宗貨物が伸び悩んだなど,重量の割には価格の安い貨物の輸出入量が前年より減少したためと考えられる。
  48年3月末における我が国の外航船腹量(3,000総トン以上の鋼船)は1,188隻,2,863万総トンとなり,前年同期に比べ隻数で5.6%減少したものの,総トン数では10.7%増と順調に増加した。隻数の減少は貨物船の減少によるものであり,この1年間で貨物船が78隻減少しているが,これは計画造船などによつて建造される外航船舶の大型化が進む一方,国際競争力が低下している中小型船舶の海外売船が増加したためである。
  また,我が国の船会社が外国からチヤーターして運航するいわゆる外国用船の船腹量は44年頃から急激な増加を続け,48年3月末には711隻,1,507万総トン(2,670万重量トン)に達し,我が国外航船腹量の約半分にあたる船腹量になつており,我が国の貿易物資輸送の重要な担い手になつている。
  47年における邦船及び外国用船による輸送量,運賃収入は 〔II−(I)−2表〕のとおりである。邦船による輸送量は輸出入・三国間合計で約2億6,400万トンと46年に比べ1.1%減少した。これは,海員ストライキのため,その期間の邦船輸送量が大きく減少したことが主な原因になつている。また,このような輸送量の減少,更には46年12月の円の切り上げなどにより,47年における邦船運賃収入は約5,721億円と前年に比べ15.4%減少した。

  一方,我が国の船会社が手当てした外国用船による輸送量は輸出入・三国間合計で約1億4,200万トンと前年に比べ13.5%増加し,邦船輸送量の54%に達しているが,外国用船による運賃収入は円切り上げなどの影響により約3,197億円と前年に比べ4.5%増加したにすぎなかつた。
  47年における積取比率は 〔II−(I)−3表〕のとおり,輸出28.7%,輸入41.9%と前年に比べそれぞれ5.5,3.1ポイント低下した。また,外国用船を含めた積取比率でも輸出49.2%,輸入62.6%と前年に比べそれぞれ2.8,2.6ポイント低下した。邦船の船腹量が順調に増加し,一方貿易量は輸出ではほぼ横ばい,輸入では微増という低い伸びにもかかわらず邦船による横取比率が低下したのは,前述のとおり3カ月にわたる海員ストライキによる邦船輸送量の減少が大きな原因となつている。

  また,47年の海運関係国際収支は 〔II−(I)−4表〕のとおり,受取22億4,040万ドル,支払い30億8,450万ドルで差引き8億4,410万ドルの赤字となり,前年に比べ7,940万ドル赤字幅が増加した。このように赤字幅が前年より増加したのは,上記の積取比率の低下が示すように,輸入貨物が外国船へ流れ,貨物運賃収支が再び赤字になつたこと,外国用船船腹量の増加による用船料の支払いが増加したことなどが主な原因となつている。


表紙へ戻る 次へ進む