1 損益状況昭和47年度における外航海運企業の経営状況を,我が国外航海運船腹量の約8割を占めている外航海運助成対象会社44社の実績についてみると, 〔II−(I)−7表〕に示すとおり経常利益は前年度より287億円少ない148億円に減少した。この結果46年度の配当会社26社中8社が無配に転落することとなつた。(うち47年9月期に無配で,48年3月期に復配したもの2社)
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集約以来の利益の推移状況では, 〔II−(I)−8図〕に示すとおり,経常利益額,総資本収益率,売上高総利益率ともに前年に続いて大きく落ち込んだが,このような業績悪化の原因は,前年度の46年12月と今年度末にあたる48年2月との2度にわたる通貨調整による減収,大幅な賃金アツプ等による費用の増大の影響もあるが,年度当初の長期の海員ストライキにより,営業期間の4分の1が空白に近い状態に推移したことが大きく影響している。
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運賃収入について,外航海運助成対象会社44社の運賃収入のうち8割近くを占める中核6社の47年度の実績でみると, 〔II−(I)−9表〕のとおり船舶の稼動延トン数は3億6,907万トンと前年度比12.3%増加したにもかかわらず,5,893億円と46年度より233億円の減収となつた。この結果トン当り運賃収入は14.3%の減となり,運賃収入から船舶減価償却費を含む諸経費を差引いた船舶損益は212億円の損失を計上した。償却後船舶損益が損失となつたのはこの数年にはなかつたことであり,通貨調整,長期海員ストライキ等による収入の減少と,一方で船員費等の費用の増大が,海運企業に大きな負担となつたことを示している。
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部門別にみると,定期船部門はコンテナ船が欧州,ニユーヨーク両航路のコンテナサービスの本格化により著しい伸長をみせた反面,コンテナ船を除く在来定期船は主要航路のコンテナ化体制の拡充に伴う航海数の縮少,積荷減少等により運賃収入は前年度比680億円,約30%の大幅減収となり,償却後船舶損益も大きく損失を計上している。他部門については,不定期船部門でやや減収,専用船,鉱油船,油送船部門でやや増収となつている。これは年度後半からの油送船を中心とする市況好転によるものであるが,トン当り収入では何れも減収となつており,償却後船舶損益では損失を計上している。海運市況は,48年度に入つても引き続いて堅調を示しているが,再度に及んだ通貨調整及び諸経費の上昇による邦船の国際競争力の低下は著しく,我が国海運企業をとりまく環境は依然極めてきびしいものがある。
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