1 技術開発の動向
(1) 大型タンカーの建造
船舶の大型化はタンカーにおいて著しい。現在,タンカーは25〜30万DWT(載貨重量トン)クラスのものが標準船型として多数建造されているが,昭和48年2月には48万DWTタンカーが就航し,また,海外においては50万DWTクラスのタンカーが建造されつつある。更に,我が国をはじめ欧州の大手造船所において70万DWTタンカーが具体的に検討されている。
このような大型化の傾向に鑑み,運輸大臣から「100万重量トン型タンカーの建造に関する総合的技術開発方策について」の諮問が運輸技術審議会に対して付され,現在,同審議会において,安全,公害防止に関する問題を中心にして,審議が進められている。
(2) 大型超高速コンテナ船の開発
国際コンテナ海上輸送の進展に伴いコンテナ船の大型化・高速化の傾向が顕著である。我が国においては,43年に初めてのフルコンテナ船(航海速力23ノツト,コンテナ積載750個)が建造されて以来,その大型化・高速化は年々進み,47年には,航海速力28ノツト,コンテナ積載2,200個のコンテナ船が建造されるに至つている。一方,海外においても,47年9月に航海速力30ノツトのコンテナ船が就航している。このようなコンテナ船の大型化・高速化の傾向に鑑み,運輸省は,47年度より5か年計画で,コンテナ積載3,000個,航海速力35ノツトの大型超高速コンテナ船の開発を推進しており,官民共同で,船型,プロペラ,船尾管軸受,中速ギヤードデイーゼル機関,逆転装置について重点的な研究開発が実施されている。
なお,中速ギヤードデイーゼル機関の開発については,47年度で実機の試作が完了し,現在,実用化試験が行われている。
(3) 超自動化船用シミユレーターの開発
航行の安全,船員労働力のひつ迫化等から船舶の自動化が進展しているが,更に将来はコンピユータを大幅に利用した超自動化船の出現が技術的に予測される。このため運輸省は,船舶の高度集中制御方式の研究開発を推進し,その試設計(9人乗り船舶)を45年度に実施したが,この構想を一部取り入れた船舶が,現在8隻就航している。しかし実際に超自動化船を実用化するためには,まだ航法,ギ装,機関システム等について検討すべき問題点があり,しかも,こうした船舶は在来船と比べて就労体制も全く違つたものとなつて,乗組員に要求される運航技術はかなり高度なものになるため,航法,ギ装,機関等の最適システム設計及び乗組員訓練用としてシミユレーターの研究開発が必要である。したがつて,運輸省では,47年度から2年計画で,最適システム設計の研究開発と乗組員の養成を目的とした超自動化船用シミユレーターの試設計を実施している。
(4) LNG船の建造
無公害エネルギー源として注目を集めているLNG(液化天然ガス)は,エネルギー資源の有効利用の観点から,今後その需要が大幅に増えることが予想され,これに伴い今後多数のLNG船が建造され,大型化していくものと思われる。LNGは-162℃の極低温爆発性ガスであるため,これを運搬するLNG船の建造には極めて高度な技術を要する。現在,世界で就航中のLNG船は15隻で,いずれも欧米で開発建造されたものであるが,我が国においてもLNG船の建造体制が整備されつつあり,52年に128,600m3の大型LNG船が我が国初のLNG船として竣工する予定である。
(5) 船舶の防食防汚に関する研究開発
船船の防食防汚に関する研究はかなり古くから各分野において実施されてきたが,最近の船舶の大型化に伴う塗装,除錆,清掃等の作業量の増大,バラストタンクの異常腐食及び外板汚れによる高速化への影響が大きな問題として提起されている。
このため,運輸省では47年度より5か年計画で船舶の防食防汚の研究開発を推進しており,(1)船体塗装法(2)バラストタンクの防食方法(3)安全性の高い長期防汚塗料の研究開発が船舶技術研究所及び民間研究機関で実施されている。
(6) 安全,公害防止の技術
安全,公害防止に対する社会的要請は年々強まつているが,船舶関係の各分野においてもこれらの技術開発が進められている。
47年6月の海洋汚染防止法の施行と相まつて高性能油水分離器の開発が47年度より官民共同で行われており,また48年度においてはタンカー等の流出油を回収する油回収船の試設計がなされつつある。
更に,船舶に塔載して時々刻々の海象,気象状況,機関作動状況を検出,表示,記録し,航行の安全,海難原因の究明に寄与するナビゲーシヨンレコーダの研究開発が行われているが,47年度に試作機が完成し,現在その実船塔載実験が行われている。
一方,陸上から送られるテレビ画像等によつて,大型船が霧中夜間でも安全に狭水道を航行できる船舶誘導システムの開発が,47年度運輸省科学技術試験研究補助金によつて実施されている。
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