1 港内,狭水道における交通安全の確保
最近における船舶による貨物輸送量の飛躍的な増加を反映し46年に我が国諸港へ入港した100総トン以上の船舶は約350万隻と10年前の2.6倍に及ぶとともに,船型の大型化,高速化も進められ,加えてエアクツシヨン艇などの特殊船の増加,シーバースの設置等により海上における安全を確保するうえで特段の配慮と検討を要する問題が増加している。
特に,経済活動の中心となつている東京湾,伊勢湾及び瀬戸内海の3海域の諸港への入港隻数は,全体の73%にあたる257万隻を占め,10年前の3.2倍となつている。
(1) 海上交通安全法の施行
主要狭水道については,従来から航路標識の整備等交通環境の改善に努めるほか,巡視船艇を配備して航法指導を行い特に大型タンカーについては,通航時刻の事前通報を求め,通航時には,必要に応じ航路筋の交通整理を行うなどの措置を講じてきた。
しかしながら,このような行政指導を中心とした安全対策には,おのずから限界があつたため,我が国沿岸海域のうち特に船舶交通のふくそうする東京湾,伊勢湾及び瀬戸内海の3海域における船舶交通の安全を図ることを目的とした「海上交通安全法」が47年7月3日に公布され,1年間の準備期間を経て48年7月1日から施行された。
同法は,東京湾等3海域に浦賀水道航路等11の航路を設け,特別の航法を定めるとともに,工作物の設置等船舶交通の危険を及ぼすおそれのある行為を規制することにより,船舶交通の安全を図ることを目的としている。
海上保安庁は,同法の適切な運用により海上交通の安全確保を図ることとし,海運,漁業関係者に対し,この法律の立法趣旨及びその規制内容の周知徹底を図るとともに,航法の指導,違反船の取締りを実施している。
(2) 港内における交通安全対策
海上保安庁では港内においては港則法に基づき船舶交通の安全と整とんを図つており,大型船,外国船が常時出入する72港を特定港に指定し,港長を置いて錨地の指定,危険物の荷役等の規制を行つている。この他,特に船舶交通のふくそうする水路においては,信号所を設置して航行管制を実施しているが,港内交通の激化に対応して更に信号所を増設する必要のある港が増加している。しかしながら,複雑な分岐水路を有する港においては,従来の方式による信号所を増設するのみでは十分な航行管制を行うことが困難となつてきているため,テレビカメラ,レーダ等を使用して管制室から港内各所に設けられた信号所を遠隔操作して航行管制を行う新しい能率的・合理的な航行管制システムを確立する必要がある。そこで,最も必要性の高い東京湾について,45年度からその整備に着手し,47年度には京浜港川崎地区におけるシステムを完成し,その運用を開始した。更に,48年度には横浜地区においてもこの新しいシステムによる管制を実施する計画である。
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