1 航空運送事業


(1) 収支状況及び財務状況

  日本航空(株)の昭和47年度の収支は, 〔III−14表〕のとおりである。常業収入は,前庫度に比べて16.2%増の2,208億5,900万円であり,これに営業外収入を加えた総収入は,同15.3%増の2,363億700万円であつた。一方,総費用が同13.8%増の2,226億2,200万円であり,経常利益は,136億8,500万円となつた。これを売上高利益率(経常利益/営業収入×100)でみると,47年度は,6.2%であり,46年度の4.9%に比べやや良くなつているが,45年度の9.3%,44年度の16.9%には及ばず,全体として年々下降の傾向にある。これは,ジエツト化,大型化のもたらす生産性向上による費用増の吸収余力が少なくなつてきていることを示している。

  47年度の営業収入をみると,国際線については,旅客人員及び旅客人キロが,それぞれ前年度比16.0%,32.1%の増加となつているのに対し,大幅割引運賃を使つた団体旅行客の割合が増大したこと,また,国際通貨変動の影響により円換算運賃が下つたことにより実収単価が低下し,旅客収入の伸びは前年度比15.3%増にとどまつた。また,貨物については,貨物トンキロが,同13.9%の増加を示しているが,旅客同様実収単価の低下があり,貨物収入は前年度並みにとどまつた。
  国内線については,東京-大阪線をはじめとする在来路線での便数制限によると思われる輸送量の低滞にもかかわらず本土復帰に伴い国内線となつた沖縄線の大幅な需要増があつたこと,また,46年度の需要が比較的に少なかつたこともあり,前年度比は旅客収入28.0%増,貨物収入51.9%増となつた。
  一方,営業費用は,大型機導入による償却負担,国内線における航空機燃料税の新設等により,営業収入の伸びを上回る前年度比16.6%増となつた。
  経常損益においては,通貨変動による為替差益及び航空機売却益等を含む営業外収入によつて増益となつた。
  このうち,合理化機械特別償却準備金,従来からの海外取引割増償却準備金等につき,戻し入れを差し引いて計97億6,200万円の繰り入れを行い,税引前利益は39億2,300万円となつた。この結果,47年度の税引前利益は,前年度比13.9%増となり,46年度の同35.7%増から21.8ポイント減少した。なお,民間保有株式に対しては,引き続き8分配当を行つた。
  日本航空(株)の財務状況は 〔III−15表〕のとおりで,47年度末の総資本は,前年度末に比べ,13%増の3,147億9,300万円に達した。また,年度末の財務諸比率をみると自己資本比率17%,負債比率359%,固定長期適合率97%,流動比率11O%となつている。自己資本比率は,45,46年度末の同率が,それぞれ20%,15%であり,また,負債比率は,それぞれ292%,409%であつた。両率は大型航空機導入による負債が多額に及んだ46年度末に比べて,わずかながら改善されているが,45年度末の水準には及ばなかつた。固定長期適合率は,45年度末で102%,46年度末で100%であり,また,流動比率は,それぞれ94%,98%であつたものが,各々改善されている。

  なお,日本航空(株)を除く国内線定期航空運送事業者別の収支状況は, 〔III−16表〕のとおりである。全日本空輸(株)は,機材の大型化,ジエツト化を図つた結果,旅客輸送実績が向上し,更に航空機処分益,為替差益等の特別利益があつたため,税引前当期利益は63億円となつた。しかし,東亜国内航空(株)は,YS-11型機の生産性の低下及びジエツト化の推進に伴う先行投資の増大等により経常損益で33億円の赤字となつた。

  国内定期航空運送事業の最近数年間の利益率の推移は, 〔III−17図〕のとおりであり,43年度までは急速に収益性が高まりつつあつたが,44年度から低下のきざしがみえ,47年度は,東亜国内航空(株)の不振が大きく,売上高営業利益率ではマイナスとなつた。

(2) 日本航空(株)に対する助成

  日本航空(株)は,47年度においても,46年度に引き続きかなりの業績を示したが,今後,同社は大型機就航による本格的大量輸送時代を迎え,また,シベリア線の門戸開放による欧州企業の進出等により,ますます激化する国際競争に直面せざるを得ず,今後とも経営基盤の強化等に努めることが必要である。
  政府としても,従来から同社に対し,出資を行つているほか, 〔III−18表〕のように債務保証,政府保有株の後配等の助成措置を講じている。

 イ 出資

      47年度には,日本航空(株)に対して,36億1,600万円の政府出資を行い,47年度末の政府出資額累計は,216億9,600万円となつており,政府出資比率は46%となつている。

 ロ 債務保証

      政府は,日本航空(株)が国際線用機材の購入資金にあてるための米国輸出入銀行からの借り入れ金について,47年度末までに,総額769億円にのぼる政府保証を行い,また,182億円にのぼる日本航空社債に対する債務保証を行つており,保証残高は,償還の結果495億2,500万円となつている。

(3) 航空機輸入金融

  従来,日本の航空企業が米国から輸入する航空機の購入資金については,購入価格の80%相当分を米国金融機関からの借款によりまかなつてきた(購入価格の40%については米国輸出入銀行,40%については米国市中銀行)。この借款の債務保証は,主として日本開発銀行が行つてきた(日本航空(株)が購入する国際線用機材の米国輸出入銀行からの借款部分については,43年度から政府保証が認められた。)。
  しかし,48年度以降は,最近の国際収支の状況,航空機輸入特別金融のための法制面における手当(日本輸出入銀行法の一部改正)ができたこと等にかんがみ,航空機の購入について,従前の方式による米国輸出入銀行等外国からの借款部分(購入価格の80%相当分)を国内金融(日本輸出入銀行外貨貸し)に変更することとした。

(4) 国内航空運賃の動向

  国内線における航空運賃は,幹線については30年,ローカル線については41年の運賃水準がほぼそのまま維持されてきたが,46年8月から航行援助施設利用料の徴収による負担増,47年4月から新規賦課されることとなつた航空機燃料税(47年度5,200円/kl,48年度10,400円/kl,49年度以降13,000円/kl)の負担増,更に,その他の諸経費が高騰していることを理由として,47年1月,国内線定期航空運送事業3社から,旅客運賃を平均23.0%,貨物運賃を平均21.1%値上げする旨の運賃改訂申請がなされた。この申請に基づき,航行援助施設利用料並びに航空機燃料税の負担増分に見合うものとして,旅客運賃を平均9.5%(幹線7.5%,ローカル線11.8%),貨物運賃を平均8.6%(幹線7.5%,ローカル線11.6%)増とする改訂を認め,47年7月15日から実施することとなつた。
  なお,46年8月から廃止していた往復割引運賃は,運賃改訂と同時に復活された。


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