4 新東京国際空港
新東京国際空港は,航空輸送需要の急激な増大と航空機の急速な進歩に対処できる国際空港として,30年代後半に計画され,41年に,その位置が千葉県成田市三里塚地区に決定された。以来,その建設は,新東京国際空港公団により進められており,また,そのほかの関連する諸施策も政府,関係地方公共団体等によつて進められている。
(1) 建設の現況
新空港の敷地面積は,約1,065ヘクタールで,東京国際空港(羽田)の約2.6倍の規模である。この新空港は,60年度の東京地区の国際航空輸送需要に対応できるように計面されており,3本の滑走路のほか,旅客・貨物ターミナルビル,航空機給油施設,航空保安施設等が建設されることとなつている。このうち,第1期工事としては,全面積の約半分にあたる約560ヘクタールの区域に4,000メートル滑走路とこれに付帯して必要な旅客ターミナルビル等の諸施設を建設することとなつている。現在,滑走路,誘導路,エプロン,航空管制通信施設,航空保安施設,旅客・貨物ターミナルビル等はほとんど完成しており,供用開始を待つばかりとなつている。しかし,新空港へ航空機燃料を輸送するために計画された千葉港と新空港を結ぶパイプラインの建設工事が,47年夏に,千葉市内部分について工事中断のやむなきにいたり,現在においても再開の目途が立つておらず,全線の完成にはかなりの期間を要する見込みである。このため暫定的な措置として,公団において,鹿島及び京葉両地区から新空港近傍の公団の資材取卸場である成田市土屋まで鉄道によつて輸送し,土屋から新空港までをパイプラインによつて航空機燃料を輸送する方式が計画され,これを強力に推進している。
なお,第1期工事に引き続き第2期工事に着手することとなるが,第2期工事区域の空港用地のうち民有地は約388ヘクタールで,このうち47年度末において84%にあたる327ヘクタールを買収済みであり,61ヘクタールの用地が未買収の状態である。
(2) 騒音対策
新空港の騒音対策については,新空港の設置者である公団が,「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」に基づき,騒音区域(滑走路末端から2キロメートル,滑走路中心線から両側各々600メートルの地域)の土地を千葉県の協力を得て買収を進めており,47年度末において175ヘクタールの土地を買収している(46年度末まで92ヘクタール,47年度83ヘクタール買収)。
学校等の防音工事については,45年秋から25施設の助成措置を講じている。
(3) 関連事業
新空港関連事業としての新空港周辺の道路整備,上下水道の整備,河川改修等の事業は順調に進められている。このうち,都心との連絡道路は既に完成しており,また,上水道,印旛沼流域下水道については,一部完成し,空港への供給を行つている。更に,河川改修についても,一部完了し,引き続き工事が進められている。
なお,新空港関連事業の事業費は,47年3月に従来の2,167億円(45年3月)から2,641億円に変更されている。
(4) 都心と新空港間の連絡輸送
都心と新空港間の航空旅客の連絡輸送については,道路と鉄道の整備が行われている。
道路は,首都高速6号線,同7号線,京葉道路,東関東自動車道鹿島線のうち千葉-成田間及び新東京国際空港線が既に全線整備されており,このうち新東京国際空港線を除き供用中である。なお新東京国際空港線は,新空港の供用開始にあわせて開通する予定である。
鉄道は,京成電鉄が京成成田駅から新空港までの約7キロメートルの延長工事を47年度に完了し,現在,慣熟運転を行つている。国鉄も東京-千葉間の複々線化並びに佐倉-成田間の一部複線化を進めていたが,47年7月には,東京-津田沼間の複々線化が完成し,東京-成田間の輸送力が増強された。
このほか,道路については,湾岸道路の工事が着々と進められており,また,鉄道については,成田新幹線の工事実施計画が47年2月に既に認可されているが,沿線住民との話合いがつかず着工するにいたつていない。
(5) 開港までの問題点
新空港の開港は,当初計画では,46年4月であつたが,空港用地の買収が難航したこともあつて,その建設に手まどり,現在にいたつている。しかし,新空港の諸施設は,パイプラインを除き現在ほぼ完成している。
一方,東京国際空港は,近年の著しい航空需要の増加によつて,その処理能力が限界に達しており,45年8月から増便が不可能な状態となつている。
このような状態を一刻も早く打開するために,新空港の早期開港が必要であるが,開港にとつて大きな障害となつているのは,航空機燃料輸送のほか設置反対者等によつて4,000メートル滑走路の延長上の場外に建設された2基の鉄塔である。
|