1 国際観光の一般的動向


  世界の国際観光は,観光客数及び旅行収入において,毎年その記録を更新して発展を続けている。官設観光機関国際同盟(IUOTO)の推計によると,1971年に世界各国が受け入れた観光客の合計は, 〔IV−25表〕のとおり,前年比7.1%増の1億8,100万人,旅行収入は11%増の199億ドルに達している。

  なお,1972年は,観光客は9.4%増の1億9,800万人,旅行収入は25.6%増の250億ドルに達している。
  1971年の特徴としては,今まで長期にわたり低い伸び率を示してきた中東地域への観光客が,前年比21%増の340万人に達したこと,アフリカ地域への観光客が,前年比15%増の262万人に達し旅行が活発となつたこと,太平洋及びアジア地域への観光客が,1970年の大阪における万国博覧会の反動として減少をみせたことがあげられる。
  地域別に受入観光客の状況をみると, 〔IV−26表〕のとおりヨーロツパが全体の75%,アメリカが19%を占め,両者で94%を占めている。

  1971年のヨーロツパにおける国際観光の特徴としては,全体としては,観光客受人数は増加したものの,主要な観光国であるスイス及びイタリアにおいて,観光客受入数がほぼ前年と同様であつたことがあげられる。
  主要国の観光客受人数は 〔IV−27表〕のとおり,ギリシヤ,ポルトガルにおいて高い増加率を示している。近年,ヨーロツパヘの観光客の送り出し国として,米国及びカナダについで日本及び西ドイツが注目されてきている。

  1972年の米国における観光客受入数は,前年比11%増の1,520万人に達し,その増加率は前年に比べて高くなつてきている。観光客の大半は,カナダ及びメキシコからであり,特にカナダ人の占める割合は,1971牢74%,1972年72%と非常に高くなつている。1972年のカナダ及びメキシコ以外の国からの観光客は,日本が英国を抜いて第1位で,前年比34%増の42万人,次は英国で19%増の39万人,以下西ドイツ24万人,フランス16万人となつている。日本人観光客は,近年著しく伸びており,その大半はハワイ及びグアムに集中している。
  太平洋・東アジア地域は,過去数年間, 〔IV−28図〕のとおり,観光客の受入数の伸び率は,世界各地域のうち最も高成長を示してきており,今後も大きな発展が予想されている。1971年の地域別の観光客受人数の状況は 〔IV−29表〕のとおり,日本は減少しているが,ヨーロツパからの途中帰港地にあたるタイ,シンガポールやインドネシアはそれぞれ順調に伸びている。

  また,我が国の隣接国である韓国は,日本人客の増加により高い増加率を示している。この地域を訪れている主要観光客は 〔IV−30表〕のとおり米国人及び日本人である。米国人観光客は,日本,韓国,タイ及び香港において,主要な観光客であるが,その割合は多くの地域において年々減少している。一方,日本人観光客は,いずれの地域においてもその割合は増加しており,この地域における比重はますます大きくなりつつある。


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