1 公共事業費による施設整備状況社会資本のなかで重要な位置を占める交通関係社会資本の蓄積状況についてみると,運輸関係施設の整備は経済社会情勢の変化に十分対応しているとは言えない状態にある。このため輸送サービス等の低下が顕在化しており,昭和48年度においても道路交通渋滞,港湾におけるバース待ち,空港の混雑等は依然として好転の兆しをみせていない 〔2−3−1図〕。一方,鉄道,道路,港湾,空港等の整備計画については需要に応じた輸送力の確保及び増強,交通公害防止,安全性の確保等の観点から施策が進められているが 〔2−3−2図〕,地価高騰による用地取得難,地域住民の環境保全要求の高まりに伴う工事の遅れ,資材の単価上昇による規模の縮小,48年秋以降の総需要抑制策に伴う公共事業費の繰り延べ等の理由により,多くの計画で立ち遅れが目立っている。
ア 国鉄……国鉄による輸送量は近年,旅客人数,貨物トン数ともに減少又は横ばい傾向を続けており,特に貨物は48年度で1億7,600万トン,前年度比3.3%減となっている。
急増する港湾取扱貨物量に対応すべく,港湾整備5か年計画に基づいて港湾諸施設の整備が進められているが,水域施設,外郭施設,係留施設等の整備は港湾取扱貨物量の増加に追いつかず,依然として施設不足の状態にある。とりわけ東京湾,伊勢湾,大阪湾など大量貨物の集中する港湾においては取扱貨物量の限界に達しており,48年における主要五大港の滞船状況をみると,着岸船舶隻数の5.7%に当たる3,808隻が平均48時間バース待ちしている。
我が国の民間航空輸送量は旅客・貨物とも年々急激な増加を示してきた。特に47年度にはB-747,48年度にはL-1011等の広胴機の導入が始まり,本格的大量高速輸送時代の幕をあけることとなった。しかしながら,滑走路,空港ターミナル,保安施設,管制施設等の地上諸施設は大量輸送に対応した施設整備が十分に行われているとはいい難い。とりわけ東京,大阪両国際空港における過密状態は,環境保全の要請による便数制限措置と相まって,航空輸送を制約する要因となっている。このため新東京国際空港の開港及び関西新国際空港の工事着工を急ぐ必要があるが,ともに騒音等の環境問題,地域社会との調整の難航等によりその実現が大幅に遅れている。また地方空港の滑走路延長,新設工事についても高知,花巻のように同様の理由で事業が遅延している空港がある。
道路施設の整備は,自動車保有台数の増大に対比して立ち遅れを示しており,特に大都市及び周辺地域においては排出ガス,騒音など環境保全に係る沿線地域住民の建設反対運動,地価高騰による用地取得難,資材の単価上昇による工事の遅れ等により道路網の整備は困難を増しており,路面交通に深刻な影響を与えている。
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