2 各輸送機関ごとのエネルギー効率の向上
自動車では,軽量化,小型化,省エネルギー型エンジンの開発等動力源,構造上での技術改良を図るほか,適正速度の維持,無駄なアイドリングの自粛,急加速,急発進の回避等の運転の円滑化,適切なエンジンの調整・整備等の手近な改善策や,交通流の連続性を保つ広域交通管制の導入等によってもかなりのエネルギー効率の向上が期待される。
ちなみに,運輸省自動車局がまとめた最近の国産自動車についての定地燃料消費試験では,2,000ccクラスのガソリン乗用車が時速70キロで走る時と時速40キロで走る時の燃料1l当たりの走行キロを比較してみると,時速40キロの時には時速70キロ時の約1.2倍の距離の走行が可能であるという結果が出ている。
また時速40キロの場合は,排出される窒素酸化物が70キロ時の約3分の1,一酸化炭素が約3分の2になるなど環境面でも好結果を示しているほか交通安全にも大きく寄与することとなる。
航空機,船舶においては,近年とみに大型化,高速化が進んでいる。第2節で述べたとおり,大型化は省エネルギー化に寄与するといえるが,高速化については輸送効率の向上に資するものの,各輸送機関ともエネルギー効率の低下を招いており,環境面への影響などとも併せて十分な検討を要する。船舶におけるバルバスバウのごとき推進抵抗を弱めることによる省エネルギー化等は今後とも推進すべきである。
鉄道では,回生ブレーキによるエネルギーの有効利用が極めて有望であるほか,アルミ車両の導入等による省エネルギー化が期待されている。
更に長期的にみれば脱石油,つまり石油以外のエネルギー利用比率の向上が望まれる。現在,このような要請から世界的に太陽熱,地熱等の自然力,石炭,天然ガス等の石油以外の化石エネルギー,あるいは原子力,水素エネルギー等の新エネルギー等の開発利用計画が進められている。
これらのエネルギーを利用した輸送機関としては,原子力発電とともに原子力の平和利用の2本柱の一つである原子力船の実用化が有力である。原子力船は既にソ連,アメリカ,西ドイツにおいて実用運航がなされているが,我が国では試験航海中に放射能漏れの事態が生じたため,実験段階で停止しているのが実情である。今後とも安全性の確保,環境アセスメントの徹底等を通じて実用化への道を開くべきであろう。
また,ガソリン車に代わる新しい動力源を利用した車として電気自動車等の開発が期待されている。
電気については2次エネルギーであり,1次エネルギーの多角化を図ることができ,脱石油を果たしうる。電気自動車は排出ガスがなく,騒音も小さいという点で環境面で大きく貢献するうえ,運転操作時の安全性の向上,新しい都市交通システムの開発にも寄与する。発進停止の頻度の大きい近距離配達用,業務サービス用等を中心に英国では約5万台が利用されているとの例もあるが,走行能力が十分とは言い難く今後の研究開発が望まれている。
|