1 海運
従来,国際海運は,伝統的に先進国を中心として発展してきており,いわゆる「海運自由」の原則の下に契約及び競争の自由に基づく海運運営が行われてきた。
海運には,大別して,不定期船と定期船という2つの分野がある。不定期船は,具体的な個々の輸送需要に応じ配船されるものであり,定期船はあらかじめ定期的スケジュールと運賃を定め,不特定の荷主にサービスを提供するものである。定期船の大部分は,航路別に「定期船同盟」(配船,運賃等に関する船社間の協定)により運営されている。この定期船同盟は,従来海運企業間の過激な競争を防止し安定的,効率的定期船サービスの提供を確保するため必要とされてきたものである。このような観点から,従来,先進海運国の間では,複数の国家管轄権の衝突等の弊害を避け定期船同盟の円滑な運営を図るため,極力政府の干渉は避けるという政策がとられてきた。
また,船舶の運航に関しても,従来,狭い領海及び広い公海という考え方のもとに,できる限り船舶の自由な通航を確保するという「航海自由」の原則が認められてきた。
しかしながら,最近の開発途上国のナショナリズムの台頭,特に1964年に「南北問題」を討議する常設機関として,国連貿易開発会議(UNCTAD)が設けられて以来,開発途上国を中心として,「海運自由」及び「航海自由」の両原則に対する批判的動きが強まり,従来の海運制度の再検討が進められつつある。例えば,1974年4月ジュネーブにおいて採択された「定期船同盟憲章条約」は,定期船運営につき国際的な規制を行おうとするものであり,具体的には@同盟加入のオープン化A国別積取率の原則の設定(両当事国の等量化,三国船がある場合には相当程度の供与)B運賃凍結期間の設定を含む運賃変更手続の導入 C紛争解決のための国際調停手続の導入等,前述した従来の定期船同盟制度を大きく変革する内容となっている。また,第3次国連海洋法会議(1974年6〜8月,カラカス,1975年3〜5月ジュネーブ(予定))においても,領海の幅員とその管轄権のあり方とも関連して,公海における自由通航と領海(海峡を含む)における無害通航のあり方等,航海自由の原則について新しい観点から検討が加えられつつある。
その他,海運をめぐる国際的動きとしては,政府間海事協議機関(IMCO)を中心として,海洋汚染防止対策の強化,旅客手荷物運送条約(案)の検討等の動きがあるほか,国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)における1924年の船荷証券条約の改正草案の審議,UNCTADに設けられた政府間準備会議における国際複合運送問題の審議等がある。
以上のような国連等の場における多数国会議の動きのほか,二国間の海運関係の間においても,政府間ベースで協議するケースがふえつつあり,我が国の場合も,米国,ソ連,中国,韓国等の間で協議を行っている。
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