4 労働問題


  国鉄における労働組合の組織状況は, 〔I−(I)−16表〕のとおりであり,全職員42万4,913人のうち,組合加入者は約36万5,000人である。

  48年の春闘では,国労及び動労は,賃上げ要求に加え,合理化反対,年金改善及びストライキ権奪還等の要求を掲げて数回にわたる闘争を行ったが,乗客が動労の闘争に概して批判的であり,上尾駅,首都圏各駅で一部乗客による騒乱状態が生じた。
  48年の春闘に際しては,当局側は,7年ぶりに有額回答8,097円を提示し,経済的要求に対し前向きの姿勢を示したが,組合側は,この回答に納得せず,また労働基本権問題についても明確な回答を要求して,闘争を行った。
  春闘による輸送の混乱は大きく,旅客列車5万3,793本,貨物列車5万3,838本の運休,影響人員は1億6,823万人に及び減収による損失は226億円に達した。11月には,国労及び動労は,生活危機突破臨時賃金と称し,インフレ手当の要求を掲げ闘争を行った。インフレ手当については,公労委へ調停申請を行い,12月4日には,「年度末手当の0.3か月分を年内に繰り上げ支給」の調停案が示され,当局及び組合双方が受諾した。
  この闘争による影響は,旅客列車7,082本,貨物列車8,203本の運休,影響人員1,830万人に及び,減収による損失は25億円に達した。
  49年の春闘にあたり,国労及び動労は,大幅賃上げ(国労3万6,638円,動労4万円),合理化反対,時短・週休二日制,社会保障制度の充実及びストライキ権奪還の要求を掲げ,それぞれ3月以降数波にわたる闘争を行った。
  49年の春闘では,当局側は,国労及び動労が計画した4月10日から13日にわたる96時間(一部地区120時間)のストライキを前に,ストライキによる混乱を回避するため経済的要求には前向きに対処するとの方針を固め,昨年に続き有額回答(1万5,996円)を提示した。しかしながら組合側はこの回答には納得せず,また,労働基本権問題についての対処方針をきめた49年4月10日の閣議決定を不満とし,国鉄全域にわたる今日までに例のない大規模な長時間のストライキに入った。しかし,同月13日には,政府と春闘共闘委の間で労働基本権問題に関して5項目の口頭合意が成立し,ストライキは86時間ぶりに中止された。また,賃金問題については,公労委が「17.9%+8,300円」の調停案を出したが,双方の受け入れるところとならず,仲裁に移行し,5月9日調停案と同一内容の仲裁裁定が下された。
  仲裁裁定実施のための所要額は,2,748億円であり,既定予算では支出不可能と判断されたが,政府としては,早期完全実施の方針をきめ,所要の手続きをとるべく,同月14日,公労法16条による国会の承認を求め,本件は,同日衆議院,翌15日参議院でそれぞれ承認された。
  49年春闘による影響は大きく,その影響は旅客列車7万9,435本,貨物列車3万4,032本の運休,影響人員1億1,224万人に及び,減収による損失は179億円に達した。


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