2 中小私鉄対策


  中小私鉄は49年7月現在94社あるが,沿線人口の減少,モータリゼーションの進展を中心とする輸送構造の変化や,人件費等の諸経費の高騰に伴い,省力化等を中心とする企業の合理化努力にもかかわらず,その経営収支は年々悪化の傾向をたどっている。これを旅客輸送を主としている62社の48年度収支についてみると,鉄軌道業において,経常利益を生じている事業者は9社にすぎず大部分の53社は経常損失を生じている現状であり,その額は約53億円となっている。また,全事業において経常損失を生じている事業者は29社に及んでおり,その額は約36億円となっている。このため,従来より各種補助金の交付,減税措置等を行っているが,経営収支の改善は非常に困難な状況であり,48年度中に路線廃止をした事業者は6社87.3キロ(全路線廃止2社27.6キロ,一部路線廃止4社59.7キロ)である。
  しかし,上述の如く現存する路線の大部分は赤字であるが,輸送量,道路事情,地元の廃止反対等から直ちに廃止することが困難なため,やむなく運送を継続しているもので,このままでは経営を維持することは至難と考えられるものが続出しているのが現況である。このため,地域交通の中心として必要な中小私鉄のうち,他の交通機関に代替することが著しく困難なため,経営の維持が特に困難な路線及び並行道路の未整備のため直ちにバスに転換することが困難な路線で,その運行が継続されなければ国民生活に著しい障害を生ずるおそれがある路線並びに経常損失を生じている路線については当該路線の経常損失額を国と地方公共団体が折半して補助することとしており,48年度には3社3路線につき2,600万円の国庫補助を行い,49年度は14社15路線にっき約5億円の国庫補助を予定している。また大量公共輸送という鉄道の特性を発揮できる路線で,かつ,経常損失を生じている路線については,省力化等により経営の改善を図らせる一方,保安度の向上を図るため一定の利益率以下の事業者に対し,近代化設備・整備費の10%を補助することとしており,48年度には16事業者に対し7,900万円の国庫補助を行い,49年度は約1億円の補助を予定している。
  しかしながら,これらの助成措置のみでは,上述の経営状況にみるとおり経営収支の悪化を止めることは困難な状況にあり,地域住民の足の確保と地域の開発を図るための施策を更に強力に推進する必要があろう。


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