5 外航海運と石油危機
48年10月にOAPEC諸国がとった石油供給削減措置は,我が国海運にも深刻な影響を及ぼした。すなわち,各国の石油会社は船舶用燃料の供給を20%〜50%削減したため,我が国の船舶の運航計画は大きな影響を受け,スピードダウン等の燃料節約努力にもかかわらず,最悪の時期には,常時10数隻の日本船が補油を受けられないため,世界各地の港で停泊を余儀なくされる状況となった。このような状況下において,燃料油の価格は急激に上昇し,48年10月までは,ロングトン当たり20数ドルであった燃料油(C重油)の価格が49年2〜3月には80ドルを上まわる情勢となった。現在,量的な需給バランスは一応回復しているが,価格は依然として高水準であり,これは今後の海運企業の経営に対する大きな圧迫要因となろう。ちなみに,我が国海運業は1か月当たり約200万kl(年間2,400万kl)の燃料を消費し,このうち約半分を日本で,残りを外国で調達している。
我が国海運業としては,燃料油の量的確保とその価格の安定が最も緊要な問題であることはもち論であるが,今後,我が国は,石油をはじめとする資源多消費型の産業構造から,省資源的な産業構造へと転換を図る必要があるとされており,海運業においても産業構造の変化に対応した新しい体制と経営のあり方を検討する必要がある。
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