2 日本の国際航空輸送状況


(1) 概況

  48年度の我が国の国際航空輸送実績は 〔III−1表〕のとおりである。国際航空輸送量のバロメーターである有償トンキロの増加率は,前年度の増加率24.2%よりやや低下し18.2%であった。

  次に,輸送力についてみると,飛行時間,飛行距離は,前年度とほぼ同じであったが,北回り欧州線のジャンボ化を進めたため,有効トンキロは9.8%増加した。また,重量利用率は,47年度に比べて4.3ポイント上昇し59.9%となった。
  路線運営状況については,48年度には,新潟-ハバロフスク線及び鹿児島-香港線(不定期運航の定期化)が開設され,北回り東京-ロンドン線及び東京-ソウル線にB-747型機が投入された。また,49年度に入ってからは,モスクワ-ローマ線及びモスクワ-フランクフルト線が開設され,一方,台北路線が4月21日から運休されている。この結果48年7月1日現在,便数は旅客便が週134便(47年7月1日現在145便),貨物便が週2便(同2便)となった。
  次に,我が国の国際航空輸送量を世界の国際航空輸送量と比較してみると 〔III−2表〕のとおりである。48年における我が国の国際航空輸送量は,貨物部門で世界全体の伸び率よりもかなり高い伸び率を示した。世界の国際航空に占める我が国のシェアは,前年に比べ若干上昇したが,順位は,旅客人キロで世界第4位,貨物トンキロ及び有償トンキロでそれぞれ世界第5位と前年度と同じであった。

(2) 旅客輸送

  48年度の日本航空(株)の国際線旅客輸送量は,旅客人員258万人,旅客人キロ123億6,700万人キロであり,前年度に比べ,それぞれ13.0%増,16.7%増であった 〔III−1表〕。旅客人キロにおいて,前年度の増加率32.1%を大きく下回ったのは,便数面の制約及び太平洋線をはじめとする長距離路線で既に大型化が相当すすんでしまっているため,48年度中に大型化した他社に旅客が流れ,積取比率が低下したこと等に起因するものと思われる。また,旅客座席キロは以上のような事情により前年度に比べ8.7%増にとどまった。このため座席利用率は,47年度より4.2ポイント上昇して61.6%となった。
  48年度の旅客輸送実績を路線別にみると 〔III−3表〕のとおりである。旅客人キロでは,北回り欧州線が46.5%の増加率で前年度(50.9%)と同様好調であった。これは,当該路線のB-747型機運航回数を週3便から週7便に増加する等輸送力の増強を図ったことによるものである(旅客座席キロは,34.4%の伸びを示している。)。しかし,太平洋線では,9.9%の増加率で,前年の増加率40.8%を大きく下回った。これは,当該路線の旅客座席キロの増加率が4.2%と極めて低い水準にとどまっていることからもうかがわれるように,機材の大型化が相当進んでしまっていることにより増大する旅客需要に対応しきれなかったことによると思われる。また,大西洋線は,47年12月よりサンフランシスコ-ニューヨーク-ロンドン間が休止されているため,48年度は旅客人キロ及び旅客座席キロともに実績がなかった。この他の路線ではいずれも旅客人キロの伸びが旅客座席キロの伸びを上回った。

  次に,48年度の我が国出入旅客について日本航空(株)の積取比率をみるとIII-4表〕のとおりであり,日本人旅客,外国人旅客とも前年度に比べて低下した。とりわけ太平洋線における日本人旅客の積取比率の低下が著しいが,これは日本航空(株)の便数比の低下(4.3ポイント)もさることながら,前述したような日本航空(株)の機材大型化が既に相当進んでしまっていることによる旅客の外国航空会社への転移が大きく影響しているものと思われる。一方,北回り欧州線では,大型機運航回数の増加により日本人旅客,外国人旅客双方とも日本航空(株)の積取比率が上昇した。

(3) 貨物輸送

  48年度の日本航空(株)の国際線貨物輸送量は,重量,トンキロとも増加率(各々22.9%,22.3%)で前年度(各々14.6%,13.9%)をかなり上回った 〔III−1表〕。また,日本出入航空貨物量も 〔III−5表〕のとおり,前年度に比べ26.1%伸びて,47年度の増加率12.5%をかなり上回った。これらは,46年度に,米国西海岸の港湾ストの影響により貨物が航空へ大幅に転移したという特殊事情のため,47年度が増加率としては,比較的低い水準にとどまったこと及び48年12月までの国内景気の好況による内需の増加が輸入貨物の大幅な増加(53.3%)をもたらしたこと等によるものと思われる。
  日本出入航空貨物を出入別にみると,出国が前年度比7.7%の伸びであるのに対して,旺盛な内需を反映して,入国が同53.3%の伸びとなって著しい対照をなしている。日本航空(株)の積取比率は,出国,入国とも前年度とほぼ同水準であった。
  貨物の品目別では,引き続き電気機器,機械製品,繊維製品等運賃負担力の大きい品目が好調な伸びを示している。

  以上のような航空貨物輸送需要の増加傾向のなかで特に最近著しいのは,貨物チャーター便の増加である。最近の日本航空(株)の貨物チャーター便実施状況は 〔III−6表〕に示すとおりである。46年度の米国西海岸の港湾ストを契機として,高速かつ安全で,定期航空貨物運賃より低い水準の運賃で運送することができる航空貨物チャーター輸送のメリットが大いに認識されるところとなり,46年度の爆発的増加からは若干低下傾向にあるものの,依然利用度の高いものとなっている。

(4) 航空関係国際収支

  48年度における我が国の航空関係国際収支は 〔III−7表〕のとおり3億3,600万ドルの赤字となった。これを項目別にみると,旅客運賃支払額が激増していることが注目される。これは,日本人の海外旅行者が激増している一方で,前述のように日本航空(株)の積取比率が低下したことによるものであり,全体としては,赤字幅は前年度より大幅に増加した。


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