3 航空をめぐる国際関係
(1) ICAOとの関係
ICAOは,昭和19年シカゴで制定された「国際民間航空条約」(通称「シカゴ条約」)に基づき設立された国連の一専門機関で,国際民間航空の安全で秩序ある発達及び国際航空運送業務の健全かつ経済的な運営を図ることを使命としている。
48年度中に我が国が参加した主な会議は,第20回臨時総会及び外交会議,アジア・太平洋地域航空会議,第2回中東・東南アジア通信・気象地域計画グループ会議,第2回管制間隔検討パネル,第3回ソニック・ブーム委員会,第4回SSTパネル及びアジア・太平洋地域出入国簡易化会議等である。
ア 第20回臨時総会
48年8月,「シカゴ条約の一部改正」を討議するための第20回1CAO臨時総会及び「制裁措置に関する条約」(仮称「制裁条約」)を制定するためのICAO外交会議がローマで開催された。
ハイジャック,サボタージュその他航空機に対する不法な行為を行った犯人の拘束,処罰及び引渡し等について定める条約は,「民間航空の安全に対する不法な行為の防止に関する条約」(46年にモントリオールで作成,通称「モントリオール条約」)の他2条約があるが,これらの条約に加入していない国が,事件に関係した航空機,旅客等を不当に抑留したり,被疑者の引渡しを行わない等の理由から必ずしも実効がなく,航空機に対する不法行為が絶えなかった。
そこで,まずこのような国に対して各国が共同して国際航空上の制裁措置を採ることにより,モントリオール条約等の趣旨に沿った行動を強制することが考えられ,45年のICAO理事会において制裁条約の作成が決議された。これを受け法律小委員会で案文の作成作業が進められたが,各国の利害が対立し統一草案にまとめ上げるに至らず,数か国から提案された案文をそのまま48年1月にモントリオールで開催された法律委員会に提出した。しかし,委員会においては,制裁措置の条約化の方法について,新たに「シカゴ条約」の一部改正が提案されたため,この方法と新条約の制定との二つの方式が提案されたまま意見がまとまらず,案文の作成に至らなかった。この2つの方式に従って条約案文を作成することを目的とし,ICAO臨時総会と外交会議が並行して開催されたものである。しかし,これらの会議でも条約成立のための中心的な推進者の欠如,期間の不足,各国の利害の対立などの理由から条約案の採択は失敗に終わり,結局,モントリオール条約等の普遍化を各国に呼びかける趣旨の共同宣言を採択したにとどまった。
イ アジア・太平洋地域航空会議
この会議は,アジア・太平洋地域における各国の航空保安施設及び航空交通業務についての今後約5か年間の諸計画についての調整を図るため域内28か国とIATA等6国際組織団体が参加して,48年9月5日から同月28日までホノルルで開催された。同会議では,各分野にわたって討議が行われ,理事会に対して,日・米・ソの3か国に係るFIR(飛行情報区)境界線の再設定,航空路A-1の延長をはじめ多くの勧告がなされた。
(2) 二国間協定
ある国との間に定期航空路を開設するためには,通常その国との間に2国間の航空協定が締結されねばならない。また,航空協定の締結後に路線,運航便数の変更等を行うには両国の航空当局の協議による決定が必要である。
我が国は,49年8月現在,仮署名のものも含めて,31か国との間に航空協定を締結している。これに基づいて日本航空(株)は,我が国の指定航空企業として北部・中部太平洋線,北回り・南回り及びシベリア経由欧州線,東南アジア線及びオーストラリア線等を運航しており,世界の33都市へ週157便にのぼる定期便の乗り入れを行っている。
日中航空協定については,49年4月20日,両国政府が協定本文に署名を行い,5月24日,協定発効の手続きをとり,同日付で発効した。これにより,9月29日,日中間に定期航空路が開設された。
日米間の航空関係については,長年にわたって航空権益の不平等の問題が存在している。我が国は,これまでの交渉によりニューヨーク経由世界一周線,アンカレッジ経由ニューヨーク大圏コース及びグアム線等を獲得したが,なお,両国の航空権益の間には,中南米以遠権の制限,シカゴへの乗り入れが認められない等の大きな不平等が残っており,我が国政府は機会あるごとに,これらの是正を米国側に要求している。しかし,こうした要求に対し,路線の価値をめぐり両国間には大きな懸隔が存在するので,今後も日米間に懸案を残すことになると思われる。
最近,航空交通のふくそう化,航空機のもたらす騒音及び大気汚染等の問題がますます深刻化し,国際航空路線の今後の発展を図ることは極めて困難な状況となっている。二国間航空協定においては,我が国の航空企業と外国の航空企業との乗り入れ便数は原則として相互主義の観点から同便数を運航することが予定されるものであるが,我が国の空港事情によって,相手国の乗り入れ便数を制限する以上,我が国の乗り入れ便数についても同じような制限を受ける恐れがある。それゆえ,我が国をめぐる国際航空路線の発展のためには,空港問題,騒音問題等に対する配慮を十分に払い,これらの問題と調和を図ることが要求されている。
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