5 海外旅行の健全化
最近,急激な海外旅行者数の増大のなかで,旅行先の諸外国とりわけアジア諸国の一部において日本人旅行者の行動,マナーについてとかくの批判があり,日本人旅行者が必ずしも全面的に歓迎されていない状況が生じている。これらの原因としては,@日本人が諸外国の宗教,風俗,習慣,国情等についての予備知識が乏しかったり,特にアジア諸国における国情や対日感情の認識,配慮が十分でないこと,A慰安旅行,招待旅行等団体旅行が多いため,群集心理にかられ,旅の開放感も加わって“旅の恥はかき捨て”的行為に走りがちであること,B旅行者が直接接する旅行業者においても説明が不十分であるのみならず,一部には不健全な旅行に関係しているものがなきにしもあらずであること等があげられる。
海外旅行者の言動は諸外国にとって我が国の文化,伝統,国民性等を判断する材料となるものであり,その改善は,国際間の相互理解の増進上重要かつ,緊急な課題である。
このため運輸省では,次の施策を講じ,日本人海外旅行の健全化に努めている。
(1) 旅行業者に対する指導
(社)国際旅行業協会を通じ,不健全な旅行に関与しないこと,添乗員をはじめ従業員に対する教育・研修を強化すること,旅行参加者に対し海外旅行のマナーを周知徹底すること等について指示するとともに旅行業者の行動基準の作成について指導した。なお,同協会は49年3月,上記行動基準を制定し,その徹底を図っている。
(2) 海外旅行のマナーの向上は,基本的には国民一人一人が,国際間の相互理解という国際観光の意義を十分理解し,海外旅行を実りあるものとする心構えにかかっているので,国民に対するPRとして総理府を通じてテレビ,ラジオ,週刊誌等を利用して海外旅行マナーの周知を図った。
海外旅行の健全化の問題は,わが国と諸外国との相互理解と友好親善の増進上重要な課題であり,また早急には解決が困難な問題であるので,今後とも引続き所要の指導を講じていくこととしている。
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