1 輸送の動向全国の幹線旅客輸送量は,昭和38年度から48年度までの10年間に2億3,500万人から5億3,600万人へと2.3倍となり,同期間の域内旅客輸送量の伸び率1.6倍を上まわって拡大した。これを輸送機関別にみると 〔2−2−1図〕のとおり,すべての輸送機関について大幅な増加がみられ,なかでも自動車と航空の伸びが著しいが,鉄道の占めるウエイトは依然として大きいものがある。
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また,この間,新幹線,航空,高速道路等幹線交通網の整備の進展,時間価値の増大等を背景とした幹線旅客輸送の高速化には著しいものがあり,49年度においても, 〔2−2−2図〕のとおり国鉄の特別急行,航空の利用客の輸送人キロに占める比率は増大している。なかでも,新幹線は年々その役割を拡大してきているが,特に50年3月の博多開業後50年度上半期の実績をみると,新幹線輸送量(全線)が前年同期に比べて29.6%増と,航空からの転移,新規需要の誘発等により大幅に増加した。このような幹線旅客輸送の高速化は,例えば国鉄グリーン車の利用客数が増加しているといった事実とともに,旅客がより良質なサービスを求めていることを意味し,また同時に所得水準の向上と運賃料金水準の相対的な低下がそれを可能としてきたことを示している。さらに,幹線旅客輸送の推移を地域別にみると, 〔2−2−3図〕のとおり,三大都市圏を中心とする輸送量が圧倒的に多いが,その幹線旅客輸送全体に占めるウエイトは,三大都市圏相互間では38年度の42.3%から48年度には36.5%へと後退し,これに対し三大都市圏と他地域間のそれは同期間に44.8%から50.1%へと大幅に増加し,旅客輸送が地方圏の発達あるいは観光レクリエーションの多様化により広域化していることが注目される。
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次に,全国の幹線貨物輸送量をみると,38年度から48年度までの10年間に2億8,000万トンから6億1,400万トンヘ2.2倍に増大した。
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このような品目構成の変化とその背景となる産業構造の変化は,輸送機関の消長にも大きな影響を与えた。まず,内航海運は,石炭から石油へのエネルギー転換,資源の海外依存度の拡大と重化学工業の発達等を背景とする臨海工業地帯の発展及びこれに対応した港湾の整備,内航船舶の専用化,大型化等により,石油,鉄鋼等を大宗貨物として著しく増大した。また,自動車は幹線道路網の発達に支えられて,その機動性と確実性を活かし機械,雑工業品等の比較的運賃負担力の大きくロットの小さい2次産品の需要増を吸収して,その輸送量を大幅に増大させた。これに対して鉄道は,産業構造の変化等に伴い大宗貨物であった石炭,鉱石等の1次産品が減少したことに加え,貨物設備への投資がコンテナ輸送等一部の分野を除き全般的に不足したため,近代化の立遅れと主要線区及び大都市の拠点駅等において隘路が存圧し続けることとなり,その輸送量は減退傾向にある。また,ストライキ等の影響による荷主の国鉄貨物輸送に対する信頼感の喪失も,貨物輸送量の減少に一層の拍車をかけているといえよう。
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なお,幹線貨物輸送を地域別にみると 〔2−2−5表〕のとおり,三大都市圏を中心とする輸送が圧倒的に多く,産業の地方分散化傾向を反映して貨物輸送についてもその広域化傾向がみられる。
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また,経済規模の拡大に伴う我が国の貿易の進展は著しく,49年度には原油,鉄鉱石等の基礎資材を中心とする輸入が5億9,900万トン(40年度の2.9倍),鉄鋼等の工業製品を中心とする輸出が6,500万トン(同2.7倍)に達している。
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