2 施設整備の方向


  以上述べたような幹線交通の動向に対応して,鉄道,道路,港湾,空港等の整備が数次にわたる長期計画等に基づいて実施され,また,内航海運,フェリー等についても,その整備増強が図られるなど新しい幹線交通ネットワークの形成が進められてきた。

ア 鉄道

  新幹線鉄道については,49年度までに東京―福岡間約1,069キロメートルが完成したほか,全国新幹線鉄道整備法に基づき,現在,東北,上越,成田の各線(合計約831キロメートル)が国鉄及び日本鉄道建設公団により建設されている。また,在来線についても主要幹線の整備増強を図った結果, 〔2−2−6図〕のとおり複線化率は40年度末の16.9%から49年度宋には25.2%へ,また電化率は同じく20.4%から34.9%へと向上し,その結果,特急の設定キロ数が40年度から49年度までの間に3.7倍となるなどスピードアップが可能となった。また,貨物輸送についても,その近代化・合理化に努め,44年から開始したフレートライナー網が全国的に拡大し(49年度末の設定本数120本), 〔2−2−7図〕のとおりそのシエアを伸ばすなど協同一貫輸送を推進するとともに,石油,セメント等については専用ターミナル等の整備を図ることにより物資別専用輸送を推進するなどの合理化が進められてきた。
  なお,青函トンネルについては,日本鉄道建設公団が,また本州四国連絡鉄道については本州四国連絡橋公団がその建設にあたっている。後者については,48年度以降総需要抑制の観点から着工が延期されてきたが,順次工事に着手する予定となっている。

  以上のうち,49年度中には,新幹線岡山・博多間の開業(50年3月)のほか,羽越本線,外房線等6線区30.1キロメートルの複線化,日豊本線,総武本線等5線区339.3キロメートルの電化,盛岡貨物ターミナル等の新設 〔2−2−8表〕などがあった。

  しかしながら, 〔2−2−9図〕でみられるように,主要線区における列車本数は線路容量の限界に達しており,この種線区での列車の増発余力,時間帯選定の自由度が失われ,旅客輸送のみならずフレートライナー等貨物輸送の増強にとっても隘路となっている。その改善のため,現在工事中の東北,上越の各新幹線の建設工事,東京−小田原間の線路増設工事等の促進を図る必要がある。さらに,東京−大阪間の輸送力についても新幹線,在来線とも既に限界に近づきつつあるので,その対策についても検討する必要があろう。

  また,施設整備の遅れている鉄道貨物輸送については,鉄道の特性の発揮できる分野に重点を置く等その効率化のための施策を推進することが必要となろう。

イ 道路及び自動車ターミナル

  道路については,数次にわたる道路整備5か年計画に基づき道路整備が進められた。この結果,一般国道は40年度末から49年度末の間に改良率は66.5%から85.5%に,また,道路舗装率は59.0%から90.6%へと向上した。高速自動車国道については,日本道路公団によりその整備が進められ,49年度末までに名神,東名等1,519キロメートルが供用され,現在,東北縦貫,中央,中国縦貫等約3,300キロメートルについて施行中である。このうち,49年度中に供用開始されたものは,中国縦貫自動車道西宮北―福崎間等305キロメートルである。
  また,物流合理化の要請に対処し,幹線貨物輸送の効率化と都市内貨物輸送の合理化を図るため,都市周辺部に京浜2区,東大阪等大規模な流通センターの整備が進められてきている。このような流通センター等においては公共トラックターミナルが建設されており,49年度末現在供用中の30バース以上のトラックターミナルは14となっている。しかし,その整備のためには広大な用地と多額の資金を必要とするため,40年以降日本自動車ターミナル株式会社が行う大規模な公共トラックターミナルの整備に対し政府出資を行っている。現在同社は東京地区において京浜2区及び板橋のトラックターミナルを供用中であるが,引き続き定立及び葛西のトラックターミナルについても整備を進めている。また,高速道路のインターチェンジ附近にトラックターミナルの整備をするため,50年度から東北及び九州の高速道路ターミナル株式会社に対する日本自動車ターミナル株式会社の出資を行うこととしている。

ウ 海運

  海運関係では,港湾整備5か年計画に基づき港湾の整備を進めており,この結果,港湾岸壁延長(水深9メートル以上のものであって民間その他の者の管理する施設を含む心)は,48年度末には19万3,000メートル(40年度末の2.1倍)へと拡大した。この間,物流体制の整備に資するため,コンテナ埠頭,フェリー埠頭及び一般公共埠頭の整備を推進した。42年度以降49年度までに京浜,阪神の面外貿埠頭公団により,外航コンテナバース20,外航定期船バース18を供用したのを始め(うち49年度中に完成したものは外航コンテナバースが京浜,阪神各2,外航定期船バースが京浜5,阪神4バース),46年度以降各港ごとにフェリー埠頭公社を設立し,49年度末までにフェリー埠頭15バースの整備を完了している。また,港湾荷役の機械化による合理化も進展しており,港湾荷役機械の保有状況は 〔2−2−10図〕のとおり,大型荷役機械,フォークリフトが大きく伸びており,クレーンは移動式への代替が進んでいる。

  なお,49年度の港湾取扱貨物量の伸びはほぼ横ばいであったが, 〔2−2−11図〕にみられるように,主要港湾の混雑は依然として高い水準に推移した。

  次に,外航船舶は,貿易物資の安定的な輸送を目的とし計画造船を中心として整備が進められ,49年年央には大型タンカー,コンテナ船,専用船等3,300万総トンと世界第2位の船腹量を持つに至った。
  しかしながら,最近における日本船の積取比率は,逐年低下傾向を見せている。これは船員費を中心とする諸経費の大幅な上昇により,日本船の国際競争力が低下してきたため,海運企業の日本船を新たに建造しようとする意欲が減退しその建造量が減少したことによるとともに,港湾事情等による船舶の稼動率の低下などにより日本の貿易物資の輸送に従事する日本船の船腹量の増加が貿易量の増大に応じられなかったためである。一方こうした日本船の船腹量の不足を補うため,我が国海運企業は積極的に外国用船を活用してきており,我が国商船隊に占める外国用船のウエイトは急激に高まりつつある。この結果,商船隊全体としての積取比率は年々増加を続けることができたが,日本船の相対的減少に伴い貿易物資の安定輸送体制をいかに確保するかが今後の課題となっている。
  また,内航船舶については,船舶整備公団による財政融資を活用して船質の改善,代替建造を進めた結果,鋼船比率も40年度の75.9%から49年度には90.1%へと上昇した。また,船腹保有量も我が国経済の高度成長に伴う基礎資材の輸送需要の増加を反映して407万総トン(40年度の1.3倍)へと増加している。
  また, 〔2−2−12図〕のとおり内航海運における専用船化の傾向も著しく,49年度末現在,全鋼船船腹量の53.2%が専用船となっている。

  また,旅客船では長距離カーフェリーの発達が著しく,43年に第1船が就航して以来,49年度末の長距離フェリー航路就航船舶は55隻約41万総トンに達し, 〔2−2−13図〕のとおり輸送量も増大している。

エ 航空

  航空については,空港整備5ケ年計画に基づき空港の整備を進めた結果, 〔2−2−14表〕のとおりジェット機就航空港が45年度の7空港から49年度には16空港となるなどローカル空港を中心にその整備が進展し,40年度から49年度までの間に国内線座席キロが5.4倍に達する等輸送力の大幅な増強が図られた。また,増大する輸送需要に応えるため,関東地区については41年に新東京国際空港公団を設立し,千葉県成田地区に新空港を建設中であり,また関西地区については,航空審議会答申に基づき,大阪湾南東部の泉州沖に関西国際空港の計画を進めている。このほか,49年度以降にあっては,騒音問題を考慮した初の本格的な海上立地空港である2,500メートルの滑走路を備えた長崎空港が50年5月に開港し,また,函館空港の滑走路延長工事が実施されるなどローカル空港の強化が図られた。

  しかし,以上述べたローカル空港の整備の進展にもかかわらず,我が国航空路線網の中心である東京及び大阪国際空港は, 〔2−2−15図〕にみられるように,外国機をも含め騒音問題から着陸回数等の規制を実施せざるをえないこともあって,数年前からその能力の限界に達しており,国内航空輸送網の整備の隘路となっているだけではなく国際線の増便も抑えざるを得ない等の問題が生じている。

  以上のような直接的な輸送施設の整備に加えて,需要の量的拡大とその高度化,多様化の要請に対応してサービス水準の向上を図るとともに,併せて安全の確保あるいは業務の効率化を進めるため,各分野でコンピューターの導入が進んでおり, 〔2−2−16表〕のとおり国鉄座席予約システム(MARS),新幹線運転管理システム(COMTRAC),航空会社の座席予約システム(JALCOMII)等の通信回線を利用した情報システム化の進展が著しい。


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